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ご注意。「黒サガムウ前提の晩年の光政×少年ムウ様」です。大人向けというかマニア向け? 生死に関わるような描写および、サド・マゾヒズム的表現がありますので、大丈夫な方だけどうぞ。 はっきり言って、 光政「ええのんか〜」 ムウ「いやあああ〜」 こんな感じです。いやほんとに。耽美のたの字もないです。 萌え処も微妙極まりないですが、それでもよろしければどうぞ。 更上一層楼 「…やはり」 光政翁の声に明らかな喜色が混じった。 翁は、ムウの足の小指の付け根を指で軽くつまんだまま 弄ぶかのように先端を左右に軽く回す。 「こんなところまで、柔らかくなっている」 仮にも足指など、そのように触れられたことのないムウはうろたえた。 しかし次の言葉はさらに予想だにしないものだった。 「愛された証です」 「何の…話ですか」 ムウはつとめて平静を装った。 光政はあらためてムウに視線を戻す。 緋色の縄に縛された白い体は、供物のように台座に載せられていた。 「貴方の身体は…男にしてはとても骨盤が柔らかい。 関節は、どこもかしこも潤っている。…つまり」 少年は信じられないという面持ちで次の言葉を待っている。 ムウの左足の甲をゆっくりとさすりながら翁は続けた。 「ありていに申し上げれば、すっかり男を受け入れる体になっているということですよ」 「馬鹿な…っ」 たまらずムウは叫んだ。その勢いでガタリと台座が動く。 「その状態で口がきけるとはさすがだが…縄が切れたら約束は反古です」 その言葉がムウの理性を僅かに戻した。 ムウは耳朶まで朱にそまった顔を背け、吐き棄てるように言った。 「…早く…済ませたらどうです」 …そうだ、これ以上この老人の口車に乗ってはいけない。 一刻も早く、この屈辱的な戒めから逃れなくては…。 * * * ムウが城戸邸を訪れたのは三度目だ。 老師の話の通り、この老人の持つ射手座の黄金聖衣は間違いなく本物だった。 「孫娘」沙織も…しかり。少女の小宇宙は未だ目覚めていないが、 万一を考えて聖衣に改造を施したのだ。 今日はその聖衣を渡すための最後の来訪となるはずだった。 女神は充分すぎるほど恵まれた環境で暮らしていた。 光政は少女にとって完璧な保護者であり、世知に長け、年齢を感じさせぬほど快活で、 気遣いと笑顔を絶やさぬ男であった。 二度会ううちにムウは老師の忠告も忘れ、この男にすっかり気を許していた。 その夜も、ムウは光政に招かれるままに食事に呼ばれていた。 贅を尽くした料理を終えたあと、翁は聖域について聞きたいと人払いをさせ、 おもむろに話を切り出した。 「聖闘士になれる確立とは…どのくらいのものでしょうな」 「位にもよりますが、最も良くて…せいぜい10人に1人、でしょうか。 実力があっても、星の導きがなければ無理です」 ムウが答えたとたんに光政は突如として滂沱の涙を流しはじめた。 唖然とするムウの前で、光政は声を振り絞るように続けた。 「…あの子供たちは…すべてわたくしの実の子なのです…」 「なんと…」 グラード財団はほとんど無償で、その子供らを聖域に寄付していたのだ。 光政は自らの苦行を、義人アブラハムになぞらえてかろうじて耐えたと説明した。 「あなたにはおそらくこの気持は分からないでしょうね」 光政の涙は止まらない。 その人数が実子であるということの意味を実感をもって知るには未だ幼いムウは、 その犠牲の大きさと、翁の奇特さに感銘すら覚えた。 「わたしは酷い男だ。子供たちには生涯恨まれることでしょう。しかしそんなことは 構いやしません。何より辛いのは6、7歳の可愛いさかりの子供たちを手放し、 過酷な運命を強いてしまったということです」 翁は、堪えきれないというように、白い手巾に顔をうずめ、肩を震わせた。 ムウはいつしか涙ぐんでいた。この老人の言葉の端に、厳しい師父からは聞くことの できなかった自分への思いの欠片を、もしかしたら探していたのかもしれない。 ムウは翁が崩れ落ちたソファの横に座り、黙ってその震える肩に手を乗せた。 「ムウ殿…あなたは優しいのですね。こんな老いぼれのために…」 「いいえ。わたくしがお慰めできればいいのですが」 「ではお言葉に甘えて、…ひとつわがままを聞いてもらえるかな」 光政の声が急に遠く感じられた。 「翁…?」 「こんな真似をしたくなかったのですが、わたしには時間がないのです」 * * * 気がつくと、ムウは四隅に車輪のついたベッドに横たえられていた。 確かに油断していた。一般人の、しかも老人に、何ができるだろうと。 しかし今もなお手足は痺れ、意識も朦朧とし、息をするのも苦しい。 …毒を盛られたのか。自分や老師は裏切られたのか。女神は… 翁はムウの心を読んだかのように言った。 「心配はいりません。わたしが欲しいのはあなただけです」 「…?」 「一晩だけでいい。わたしのものになってください」 言葉の意味を悟るとムウは心の底から脱力した。 …この好好爺も、そこらへんの男と同じように、欲望に駆られただけなのか。 ムウの目に失望の色が浮かぶと翁は続けた。 「聖域側からも圧力があることも確かです。正直、非情に苦しい立場だ。 しかしあなたが誠意を見せてくださればあるいは…」 …懇願の次は脅迫、か。 目的のためなら手段を選ばないとは本当のことのようだった。 女神とニケの杖がこの男の手にある以上、答えは明白だ。 ムウは静かに目を伏せた。 ムウの身体はそのまま奥に運ばれた。 そこは蝋燭の炎の揺らぐ、ほの暗い部屋だった。 ムウの限られた視界には四隅で作業をする半裸の男たちが映った。 腰に布を巻きつけ、背には仏画のような極彩色の刺青がある。 ムウは寝台というよりも台座のような卓に移され、服を脱がされると 屠られる生贄さながらに四肢を固定された。 男たちは慣れた手つきであっという間にムウの身体を縛した。 大きく開かれた脚は膝を曲げた状態にされ、 両の手首は胸が反り返るように背に回された。 身体にはさらに腰を浮かせるように細い二重の縄が張り巡らされる。 鮮やかな朱がまるで蜘蛛の巣のようにムウの身体を縦横に走っていた。 「美しい…」 緋色の絡んだ白い肌が闇に浮ぶと、光政翁はそういって両の手でムウの腹を撫で、 頬をすりよせた。 老人の手が尻、内腿、腕の内側、脇腹を中心にせわしなく往来するも、 少年は身じろぎもせずその不快さに耐えた。 ムウはもはやどうにでもなれと捨て鉢な気持であった。 人前で自由を奪われ、見知らぬ男たちに辱められる。 そんなことはすでにこの少年には珍しいことではなかった。 手足に枷をされ、裸で雑兵の宿舎に放り込まれてもみくちゃにされる。 ムウの身体を支配している男はそんな悪趣味ないたずらを好んだ。 いったい、どれほどの男たちがムウの身体をむさぼっただろうかなど、 もはや想像もつかない。 さすがに最近はやすやすと魔拳をうけることもなく、回数は減ったが、 いずれにせよ、酷い扱いを受けていることには変わりない。 多少おかしなことをされたところで、今更であるのだ。 しかしこの老人は、先ほどから自分の身体を撫でさするばかりで何も仕掛けてこない。 「すっかり男を受け入れる体になっている」 不審に思った矢先の、あまりにも無礼な言葉だった。 翁はこうも続けた。 「あなたの身体にはその相手の記憶が刻まれている…」 ムウは嫌悪感をあらわにした。 …「愛されるうちに身体が変わる」…などと、おぞましいにもほどがある。 あの行為を、「愛する」などと… 「…早く…済ませたらどうです」 徒らに抗ってもしかたがあるまい。ここは早々にこの老人を果てさせればいい。 しかしそれでも媚態をつかうことは彼の誇りが許さず、そう言い放つのが関の山だった。 「まあ、焦ることはありません…そんなに欲しいなら別ですが」 ムウは思わず光政を睨んだ。 それには構わず翁は「これにしましょう」といいながら、 漆塗りの器と揃いの細筆を背後の卓から取り出した。 青くさい、発酵した植物独特の匂いが鼻をつく。 混ぜあわせると白い液は半透明になり、粘りを帯びた。 それを筆にとり、翁はムウの縄目をなぞりながら丹念に繊維に染み込ませていった。 「なに…を…」 どうやら縄にも何か染み込んでいるらしい。 液体に反応してまた別の汁が滲みだしている。 その液体は肌に触れた瞬間はひやりとしたが、すうっとムウの肌になじんでいった。 乾くに従って、皮膚の表面がぴりぴりと焼け付くように熱を持つ。 それぞれの薬効が縄目でかすかに傷ついたムウの敏感な肌に浸透してゆく。 熱は、表皮から身体の内部に移動し、次々と積もりはじめた。 「すでにかなりの高みにいらっしゃるようですが…せっかくですからもう一、二段昇ってみませんか?」 「なんの話…ふあっ」 光政はそれには答えず、その筆でムウの内腿をスッと刷いた。 ムウは思わず高い声を上げたことを恥じ、唇を噛む。 すでに先ほどの掌で光政はムウの性感帯を全て把握したようだった。 その筆裁きは完璧であった。引くと見せて焦らすという遣り方を不規則に繰り返し 足裏から膝、急所を抜けて、臍、脇、首筋、耳と、薄く柔らかい皮膚をじっくりと湿らせてゆく。 とくに臍穴への責めは執拗だった。筆先でその周囲をくすぐるように弧を描き、 筆先を洗うように汁を染み込ませた。 「く…っ…う…は」 ぬめりをもった液体に筆の穂先でなぞられるたびに足指の先までがびくびくと反射を繰り返す。 「ん…んんっ…」 空気に触れるとそれらの箇所は次第に熱と、形容しがたい掻痒感を生みはじめた。 ムウは刺激を逃がすよう、つとめて呼吸を遅くしたが、どうしても僅かに声が漏れる。 「……ん…んっ…う…ふ…」 次第に浅くなる呼吸にムウは焦りを感じた。 その様子をしばらく眺めて楽しんだ翁は、液が乾いたところを見て 今度は、細かな白い毛の植えられた大ぶりの筆でムウを苛み始めた。 筆は触れるか触れないかという境目を、産毛の先のほうをさっと掠めたかと思うと、 また恐ろしくゆるゆると往来する。 すでに薬のまわったムウの身体はそれだけで背が軽く跳ねあがった。 「ひ…っ…うあああああっ」 縄目はぴったりとムウの胸の突起をとらえていため、ちょうど背をそらすとそれがこすれ 目のさめるような鋭い快楽が身体を貫いた。 そこは、そこだけで達してしまうほどにあの男に磨かれた場所だった。 甘い痺れの余韻が重なり合い、絶えず打ち寄せる波のようにムウの内部を満たしていく。 それに呼応するかのように快楽に慣らされた身体は急速に溶けていった。 ぞくりぞくりと絶え間なく背骨を伝う震えにムウが目を開けてはいられなくなる頃には 刷毛は数本に増えていた。 その一つがムウの突起を執拗に責めている。 しかしそれは叫びだしたくなるほどにもどかしい刺激だった。 …あ…そんな…ふうにではなく…っ 「そこ」は…あの男なら…すでに充血して硬く立ち上がっている桜色をすぐさま甘噛みしては 指で押しつぶし、また舌先で立ち上げて歯をたてる… …そのたびに身体の奥深くが切ないほど締め上げられて… …もっと… ムウは知らず知らずのうちに縄目を求めて背を反らした。 「…ひっ」 それを見逃す光政ではない。ムウのそこには生温かい舌が這わされた。 「あっ…あっああああっいや、いやああっあ」 これに関しては余人の追随を許さないだろう翁の、熟練の性技が放たれた。 その絶妙な責めに泣かされた幾多の女性たちのように、ムウもまた高く切なく喘ぐ。 「い・…っ」 そして歯を立てられた瞬間にムウはあえなく果てた。 次の瞬間、ムウは僅かながら小宇宙を発してしまったことに慌てた。 普通の人間なら吹き飛ばされ、血の雨が降るはずである。 しかし翁は無事だ。見るとその傍らには黄金の杖が掲げられていた。 「な…」 「どうやら沙織が助けてくれたようだ」 「…こんな」 「死ぬかもしれないと?フフフ…わたしは常に命がけで愛する男ですよ」 …なんという… ムウは呆れて言葉も出なかった。あの黒髪のサガに勝るとも劣らない馬鹿をする人間を 久しぶりにを見た思いだった。 「たとえここで死んだとしても本望です。あなたの可愛らしい声が聞けた。そのうえ…」 光政は顔近くまで飛んだ白濁をいとおしそうに指の腹でなで広げた。 羞恥に顔を背けるムウだが、また光政に胸を責められ、中心をびくりと震わせた。 「素晴らしい…よく調えられている」 「言う…な…ああっ」 光政はその震える花芯を左手で包み込んだ。限界を迎えたばかりのそこは 痛々しいほどに充血していたが、新たな快楽にすぐに張りを取り戻した。 「あっああっあっあ…」 ムウの腰ががくがくと震えた。余韻の収まらないなか、またあっという間にムウは 二度目の精を放った。 屈辱か快楽の余波か、涙を流しながら必死で息を整えるムウに光政は言った。 「可愛らしい。実に…可愛らしい」 ムウはもう言い返す気力もなかったが、それでもギリ…と唇を噛んだ。 何が口惜しいか、分からないが、一瞬でもあのサガをしかもその責めをあのように… 恥知らずにも思い出してしまったことがムウの心を大きく揺るがしていた。 その間光政は何かを確認するように身を引いた。 翁が視界から消えるとムウは目を閉じる。 …こんなにも心が空しいというのに、過敏になった身体はまだ熱を失ってはいない。 気を許すと縛られた箇所に身体の重みがかかり、そこから次々と熱がぶり返す。 熱が引かないばかりか次第に高まってゆく体にムウは絶望感すら抱いた。 …こんな責め苦は早々に終わって欲しい。 いまなら、ああ早く…と光政に懇願してしまっても…いい。 なのにそんなときに限って翁は姿が見えなかった。 …まさかこのまま放っておかれるのだろうか。 以前にもそのような責めをされたことがあったが そのときは本当に気が狂いそうになった。 サガはわたしの動きを封じたまま、儀礼用の大蝋燭を入れて…シオンの寝室で… そこまで考えるとじんとした疼きが下腹部を襲った。 見るといつのまにか自身が回復しはじめていた。 …まさか今のでわたしは…!? 考える暇もなく、その根元に巻かれた細い紐はじわじわとムウの中心を締めはじめた。 最初に火をつけたのは自分であるが、膨張のたびに緊々となるその細い縄に、 急速にまた火照りがぶりかえした。 きつく締められた足首も、手首も、そして身体の隅々も熱い。 かすかに湿り気を帯びた繊維は当初から細い指に握られているような触感であったが、 今や汗を吸った縄はぬめり、耐え難い嫌悪感でムウを苛んだ。 ムウはもうはちきれそうなほどに膨れて、その頂から滴を溢れさせていた。 …サガとの行為で、ここまで苦しく焦らされるようなことがあっただろうか… ああ…サガはよく、こんな様子をからかって、したたるその浅ましい入り口に 遠慮なく指を差し入れてはまた溢れさせ、くびれをなぶり…先を握り締める… 溢れた体液に指をからめ、侮蔑の言葉を投げつけながら残酷にこの身を裂いて… 淫売…と低く囁くあの柔らかな声が、長い指が無遠慮に、はいって…くる… と、そこまで思いをめぐらしたことにムウは激しく赤面した。 同時にさらに根元が締まり、欲は限界まで張り詰めたことが知れた。 歯の根のあわないようなおぞましくも堪えようのない掻痒感が、 出口を求めて彷徨う熱と混ざりさらに追いうちをかけられる。 「う…く…はああ…」 さきほどから汗が幾筋も身体から滴り落ちている。 その滴の冷たさは驚くほどだ。それほど自分の肌は熱を持っているのか。 目の奥が、白く焼け付く。頬も身体も、もう何もかもが燃えるようだ。 …ああもう、許してほしい。許…して… 「…さ…が…あっ…ああ!」 三度目の白濁がムウの肌に散る。 「…うっ…うう…ううう」 思わず口にしてしまったその名のせいか、惨めな飛沫のせいか、ムウの目に涙が溢れた。 「お待たせしました」 ちょうどそのとき部屋の暗がりから光政が現れた。 見られていた…とムウは声を上げて泣き出したくなるような羞恥に必死で耐えた。 「聖衣のお礼に…あなたの望むものを差し上げたいと思って、用意しておりました」 見ると装飾を施したワゴンには大小様々な男根を模した性具が、所狭しと並べられている。 それらには球状のものも、巨大なものもあり、なかにはムウは見たこともないような 不可思議な形体のものまであった。 「どれがいいですかね?」 光政は楽しそうだ。 「そんな…もの…選びたくありません」 吐き棄てるようにムウは拒んだ。 「…ハハハ…欲張りですな」 一瞬の間をおいて、翁が高らかに笑う。 「では全部ということですね」 「な…っ…あっ…そ、それは」 翁は手早く筒型の注射器のようなものを取り出した。 独特の匂いから中身はムウを苦しめている植物の汁であることは間違いない。 そんなものを粘膜に直接いれられたら確実に気が狂ってしまうだろう。 「いや…やめてくださ…あああっ…」 ムウの懇願は間に合わなかった。 もし本気で抵抗したら容易に振り切れるはずであるのに、それすらも思いいたらないほど ムウは動揺していた。 ムウに仕置きをするような人物はシオンとサガくらいであったために、 抗わない癖でもついているのか、あるいは…。 「さて」 そうつぶやいて光政は手近な張り形を手に取る。 ムウの額に脂汗が浮ぶ。体内の熱はまださほど耐え難くはない。 真に恐るべきは混ぜられたときであるのだ。 「わたしはあまり詳しくないのですが、男にもちょうど良い大きさや堅さというものが あるらしく、どうせならそれで喜んでいただこうと思いましてね…」 翁はムウの蕾にその先端を押しあてた。 まさか、とムウは顔を上げる。 …何の準備もせずにこの男は… 「む、無理です」 「そうですか?入るでしょう、これは」 「そ…うではなくて…もう少しほそい…」 「これも充分細めですよ」 翁が気にもとめないふうに言う。 …言えるはずがない。指でかき混ぜてください、などと。 ムウは泣きそうな顔で押し黙った。 「指は後でいじめてあげますよ」 からかわれたのか。 この男が分かっていないわけがなかったのだ。 ムウはギリ…と奥歯を噛み締めた。 張り形の先でツ…と入り口を押すと、中からは鈍い水音をたてて先ほどの溶液が零れた。 それをからめとるように筒体に塗ると光政は一気に奥にまで差し入れた。 「……っ」 縄目が大きくたわむ。 脳天まで貫かれたかのような苦痛にムウは背を反らせ必死で耐えた。 予想に反して光政の責めは激しかった。 しかしそれにも関わらずムウの内部はきつく異物を締め付けて、留め置こうとしていた。 薬液は派手な音をたてて泡立てられ、急速に熱を帯びてムウの内部を侵す。 「く…う…っ」 激しい律動でムウの髪が乱れ舞う。 その白い頬が染まり苦悶のうめきに甘さが加わってくる。 同時にますます中がきつくなってゆく。 「…見事だ」 その言葉に自分の内壁がせわしなく動いていることが知れてムウは赤面した。 …認めるしかないのかもしれない。もうどうしようもなく、欲しくてたまらなかったのだ。 「く…あっあっあ…あああああ…いや…っ…」 ほどなくしてムウは果てた。 今度ばかりはムウばかりでなく光政も肩で息をしていた。 呼吸が整うと翁はしみじみと言った。 「あなたの…身体を拓いた方が羨ましい。男体は氷の山と聞きます。溶かすか、砕くか。 無論、後者が難しいのは言うまでもない。しかしあなたのお相手は、それを見事に打ち砕いたようだ」 ムウはほとんど意識が飛びかけていたが、翁の言葉を聞いて、砕く、そんな表現がまさに、 ふさわしいかもしれない、と思った。 無理矢理に硬い楔を打ち込み、何度も何度も突き崩し、跡形もなく、ちりぢりにしてしまった。 …わたしの過去も…使命も…もうなにもかも。 耐えかねて、己から求めてしまったあの夜に誇りなどはもう地に落ちたも同然だった。 「その恩恵を受けられるわたしは本当に光栄です」 「あ…あ、ああっ」 射精の後だというのに休むこともなく、もう一回り大きい玩具がムウに差し込まれる。 ビクビクと痙攣させながらもムウの身体はそれを根元まで飲み込んだ。 翁は今度はゆっくりと、抜差しをはじめる。 「く…」 ムウはきつく目をとじた。 混ぜられた液はむず痒いような刺激を生んでいた。 すでに爛れた内部は異物の圧迫感だけでは物足りず、先ほどの激しさを望んでいる。 しかし翁はまるで人が変わったかのようにゆっくりと、内部の壁面をたどるようにそれを動かした。 気の遠くなるような焦らしだ。 そんな仕打ちをしながら、翁は猫撫で声でムウに問う。 「あなたのお相手はさぞ、情の篤い方なのでしょうなあ」 「…なん…ですって」 「わかりますよ。たいそうかわいがられていることが」 「ばかな」 「…ほら」 光政は遠くからムウの弱点を掬い上げるようにニ、三度、衝いた。 「ひ…あっああ…んっ」 ムウの嬌声はもう女のように甘く、しどけない。 …もうめちゃくちゃに衝いて欲しい…そんなどうしようもない言葉すら脳裏をよぎる。 その様子に光政は感じ入ったようにため息をついた。 「素晴らしい。ここまで男の身体は開かないものですよ。よほど愛されたとみえる」 ムウは自分の心がわしづかみにされたかのようによじれるのをはっきりと自覚した。 「いったいどんな方なのですか?」 「う…それは…ああっ」 光政の右手は、戒めを絡めたままのムウ自身を往来し 左の手はさらにもう一回り大きな張り形をゆっくりと埋め込んだ。 その量感にムウの腰が悩ましくうねる。 「教えてください」 ムウが必死に声をこらえ、首を左右に振る。 乱れた髪が濡れた肌に張り付き、壮絶なほどの色香だ。 「その方はこのくらいですか?それとも」 光政は器用に、また張り形を変える。 「これくらいはありますか…」 直径が5センチほどのシリコン製のものを出し入れしながら光政は問いつづけた。 当然、ムウの急所は遠まわしに刺激するだけである。 「ううっ…く…」 「…面白い。訊ねるたびに貴方のなかがとても良く締まる」 「…っうっあ…ああ」 腰が浮き、宙をかいていたムウの両足がギリギリと硬く強張ってゆく。 「たまらないでしょう。答えるまでずっとこのままですよ」 ムウのなかで何かが崩れた。 「あのおと…こ…は…っああ」 返答したとたん、光政の速度が急に上がる。 「師の…か…仇……あああっ」 叫ぶような声とともにムウは果てると乱れた息を整えもせず、声をあげて泣き出した。 「…そうですか」 光政の声はあくまで静かだ。 「そのような方であれば、いままでのおもてなしは、やはり手ぬるかったですね…」 縄目が急にきつくなったかと思うと、ムウの身体は背からゆっくりと持ち上げられた。 「う…ぐ」 あらかじめ、吊るすつもりだったのだろう。 背を走る縄目は手首、胸、腰と足首で一列をなし、綺麗にその重さを支えている。 きりきりと食い込む縄は麻痺した体には、小気味良いくらいだ。 ムウを息苦しくさせているのは体内に埋められたままの大ぶりな玩具だった。 異物は、限界まで背がそらされているために薄い内壁を隔てて、ムウの急所にぴたりと 寄せられている。 それは達したばかりの身体には、責め苦に他ならない。 静止しているために、その玩具の不自然に強調された段差が、卑猥な細工が… それはムウの職業ゆえでもあるのだが、手にとるように知れた。 じっと耐えるムウに、光政の言葉が冷たく突き刺さる。 「いけませんね。師の仇となど…」 「ああああっ」 光政はムウの忍耐を嘲うかのように玩具の底を指でトントンと叩いた。 それすらもムウには耐え難く、あられもない声を立ててしまう。 声を上げてからそのあまりの大きさにムウは恥じ入る。 「恐ろしい罪です」 痺れた脳内と燃えるような身体とは裏腹に、心に冷たい刃がさされるようだ。 …罪… 常々感じていた後ろめたさをはっきりと言葉にされ、ムウは慄然とした。 「しかし愛してしまったのであればいたしかたない…」 その光政の言葉がムウを引き戻した。 「違う…愛…してなど…いない」 「ほう愛していない?」 「憎…くあああああっ…いや、やめ…やああっ」 光政は玩具の根元を左右にゆらしながらムウがのたうつのを楽しんだ。 「ならばなおさら罪深い」 ムウが首を振ろうとした。しかし身をよじればよじるほど縄目はムウを苛む。 「愛してもいないばかりか憎い男にそうまで身体を許すとは…浅ましいというしかないですね」 「う…」 ムウの目からまた涙が溢れた。 どちらに転んでもこの身が卑しいことには変わりなかった。 「それとも、…そのような男でなければ満足できないのですか?」 その言葉にぎくりとしたムウは思わず目を開けた。 いつのまにか光政はムウの顔の前まで来ていた。 「なんという業の深さだ…!」 ムウの、涙と涎と体液にまみれた顔をながめながら言う光政の声は上ずっていた。 欲望につかれた人間の、狂気に満ちた眼差しをムウは静かに見た。 …そう…なのだ…おそらくわたしはあの男でないと… さんざんに吐精させられてなお熱の収まらないこの体の乾きは、あの男でないと 癒されることなどないのだろう… そんなムウの胸のうちには見透かしたかのように、光政は、乱れた髪を手ではらい、 ムウの顔をうっとりと見つめている。 「わたしも…力があるならば」 その目には鬼気迫る光りすらある。 「人を殺めても我がものにしたいと思いますよ…」 「な……」 「あなたを」 ムウの脳裏に突然「わたしをこんなふうにしたのはおまえだ」というサガの言葉が蘇った。 …まさか…そんなことがあるはずがない ムウは必死でその考えを振りはらった。しかし翁の追及は止まない。 「あなたであるなら、誰もが喜んで罪びととなるでしょう」 この男は身体の責めでは飽き足らず、ムウの心までも、深くえぐろうとしている。 …もしもほんとうにすべてわたしが悪いのであればどうしたら…わたしは… 記憶の隅に押しやっていた古い傷がさらされ、ムウの理性も思考も混乱を極めた。 「罰してさしあげようか」 光政の優しい声音にムウは夢中で頷いた。 「ふ…」 縄が手繰り寄せられ、戒めがきつくなる。 ムウの苦痛のうめきはまるでため息のようだ。 「このまま精果てるまで責めるのと、鞭打ちとどちらが良いですか?」 「…む…鞭を」 ムウは苦痛のほうがまだ、耐え切れると思った。これ以上の快楽は危険だ。 「では鞭は…やめましょう」 「待っ…」 翁はそういうとムウの上体を傾けた。縄にこすれ、敏感になりすぎているムウの突起を また優しく口に含む。同時にゆっくりとムウの中心を指の背で撫ではじめた。 「は…ううっ…い…いや、いやああああ」 ムウの背後には別の男がたち、均一な速度でムウの張り形を動かし始めた… * * * そういうわけで奥の部屋からは、夜通し断末魔の悲鳴が響いていた。 防音を施してあるとはいえ、時折漏れる声を、夜中に起きだした沙織が聞きとがめた。 「お爺さまはなにをなさっているの?」 「お…お嬢様…」 付き添いの青年は丸刈りの頭まで赤くしてうろたえた。 「お客様だと思われますが、あの…その…」 「少し騒がしいわね。でもあの声はとても…喜んでいるわ」 * * * 夜も白白とあける頃、ようやくすべての道具がその役目を終えた。 ムウの縄はすでにおろされていた。光政が途中、ムウを自ら抱いたからである。 それが喜ばれないことであるのは分かっていながら、光政にしては珍しく、 自制がきかなかったのだ。 しかしムウは、自由になった脚を光政の腰に絡め、彼を狂喜させた。 光政の技が見事だったからというよりもムウ自身、どこまでも自らを貶めたいと 思ったからかもしれない。 光政は、眠るように意識を失ったムウを手ずから清めた。 服を着せ、髪を整えると彼の寝室に運んだ。 朝日のあたる寝床で、翁はムウをしばらくその腕の中に抱いていた。 …この少年こそが、愛を追い求め続けようやく巡りあった最高の美ではないか… 老人はしばし、そのような夢想を楽しんだ。 目を覚ましたムウの瞳が、いまだ熱を持っていることを知ると、彼はその妄想が 真実であると確信した。 なんと美しく、淫らな少年だろう、と。 そして年端のゆかないこの少年に憂いの影を落としている運命の過酷さを見た。 「やはりあなたの背負うものは…重いのですね」 光政は呆然とするムウの額に軽く口付けをして言った。 その口調はまるで幼い子をなだめるようだった。 「だがそれは、あなたのせいではない」 ムウの目から一筋、涙が零れた。 「あなたの師父もその男も…これからの戦いも…」 さめざめと涙を流すムウを光政はじっと見つめた。 「…わたしは…もうあの男には…会いません…」 「ほう?」 「そう決めたのです。わたしがこれから行うことは…すべてあの男を追い詰めるため。 会えるわけなどない…」 「そんなことは愛の前にはなんの障害にもなりません!」 光政の断固たる口調にムウは少したじろいだ。 「でも…憎…」 翁は厳しい面持ちで首を左右に降った。 「それでも愛しているのでしょう?あなたは身体のほうが正直ですよ」 まだ熱が収まりきれていないムウは思わず目を伏せた。 「せっかくなのですから楽しんだらよいのです」 いつもの人の良い笑みが浮かべながら光政は言った。 「あなたがたはおそらく…うっ…」 刹那、光政は激しく咳き込み鮮血が白い敷布に散る。 「翁…!」 人を呼ぼうとするムウを制し、光政は続けた。 「…申し上げたはず…わたしには時間がない…しかしその方は違う。会えるのであれば 是非ともお会いなさい。約束ですよ」 ムウはなんと返して良いかわからずただ頭をさげた。 「では…ごきげんよう、城戸翁」 「光政と呼んでください」 「光政…」 翁の満足げな笑顔が朝日に溶けた。 * * * 老師への報告を済ませると、その日のうちにムウは聖域の外れまで出かけた。 ムウの身体の縄目の跡に逆上した教皇は狂ったように少年を罰し、 かくしてようやくムウは、深く満たされた。 身体から熱がひく刹那、 「…あなたが一番欲しいものを差し上げたいのですが」 という翁の言葉がふとムウの脳裏をよぎった。 * * * それから1週間後、光政翁はその波乱の生涯を閉じた。 享年72歳。 腎虚であった。 終。 |
