(ご注意:ぬるいですが、性描写有ります。一応念のためR18。)


帰る












寒さのせい





濁った空に白い欠片が舞う。

静かだ。

「鼻が寒い」と言うとあなたはまた頭の先まで毛布を被る。
一つしかない毛布の端はすぐに引っ張られてしまうから、
わたしはあなたにくっつかざるを得ない。

寒いから。



大地の底からしんと冷えるこの寒さには、とっくに慣れっこなのに、
他人の熱で温まった布団から出るとき、
空気は刺すように冷たい。

このころあなたは良く眠る。
あなたが寝ると、ようやくホッとするのに、
しばらく経つと起きてこないことに苛立つ。

ますます深くなる眉間の皺と、少しやつれた横顔。
大きな肩と広い胸が、わずかに上下している。
世界を手に入れたあなたはちっとも幸せそうではない。
ひとりぼっちのアトラスのようだ。

しばらくあの、青く澄んだ瞳を見ていないけれど、
炎のような赤色も、やはり美しいと思う。
闇色の髪のかかる鼻梁も、額も、おとがいも、そして耳ですら…。
その、彫像のような整った面差しを見ていると、
ふとその輪郭に触れそうになって、慌てた。

わたしが急に手を動かしたからか、
サガがぴくりと動くと、片脚をどっかりと、わたしの体に乗せてきた。
相変わらず乱暴だが、呆れるほど無防備だ。

かつてわたしはこの足に踏みつけられ、
その指で、こじあけられて…

急に頭に血が上るのを感じた。
しかしそれは怒りのためではない。

そう自覚するとわたしは恥ずかしさでまた顔が赤くなる。
なぜ、あなたとのときだけ、こんなに動悸がとまらないのか。

ふと見るとすぐ目の前に、その上唇の、木弓のような円弧がある。
なだらかに刻まれた厚みは、重なり合って微動だにしない。

それらはわたしの耳元から体中に這わされ、押し付けられるのだが
その凶暴なはずの唇は、輝くほどの美しい比率で今静かに在る。

胸の奥に、ぎゅうと絞られるような感覚が走ったかと思うと
わたしはその男の上唇の端を、そっと噛んでいた。
噛むというより、歯間でその厚みを味わうように軽く挟み込む。

眠っていた男は、右目だけを開けた。
目が合ってもわたしはそこから離れられなかった。
ひょいと腰を掲げられ、指を挿し入れられて残滓をかき回されても
強いられたわけでもないのに、そのままの姿勢で耐えた。
唇を強く噛みすぎないように注意を払いさえして。


右手の中指と薬指がゆっくりと内壁をなぶる。
腰を支えていたはずの左手の指は胸に這わされ
その往来にわたしは身を震わせた。
けれどその指の動きは恐ろしいほどにゆっくりで、
あまりのもどかしさに叫び出しそうだ。

呼吸が苦しく、顔が火照る。
腰が反り、背が強張り、両脚が痺れて
体を支えるのもやっとだった。
それでもわたしは唇に縫いとめられたまま耐え続けた。

鼻にかかった吐息が情けない音を出す。
頭の芯まで溶かすような熱に何もかもが押し流される。
今、唇を動かしたら、言ってしまいそうだ。
欲しい、と。

するとそのときサガの口が急に開いて、
わたしの唇はその上側から振り解かれたと思うと、
すぐに飲み込まれた。
咥内にサガの舌が乱暴にねじ込まれる。
その瞬間、わたしは達してしまった。

それは鮮やかな快楽だった。
無理矢理引きずり出され、昇らされるのとは違う、
体の奥から湧き上がって溢れ出したような…

わたしはなぜか涙が止まらなかった。
悔しいのか、悲しいのか、えぐられるように胸が痛み、
呼吸すらできないほどに感情が乱れて
わたしはとうとう声をあげて泣いた。

いつもであれば強引に押し入る男は、体を起こすと
泣きじゃくるわたしを黙って抱いた。

そしてわたしも、信じ難いことだが、
いつもなら跳ね除ける厚い胸に顔を埋めて、
振り払うはずのその腕に縋っている。


毛布などとうに床に落ちていた。

その熱が痛いほど染みてくるのは、
震えがとまらないのは、
寒いから。

きっと、

きっと寒さのせい。










一応、ジャミールが舞台です…あそこだったら、小さなベッドで、毛布も一人ぶんで、きっとあのサガの図体だとウルトラ狭いに違いないと妄想してます。 大人げなく毛布取り合いってのもいいですよね!ムウ様の年齢はご想像におまかせします。110207追記


それにつけても寒いと布団から出られないですよね