【ご注意】
サガムウ前提の双子ムウです。性描写があるので大人向け、ちょっと痛い&特殊?(双子×ムウ)です。







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hemisphere





夜空の彼方が暁に染まり始める。
漆黒を裂く炎はまるで身を焦がす流星を宿したかのようだ。




     *     *     *


…夜明けか…
ムウは意識の端で細く漏れた光の帯を認めた。
とうとう寝具を使うことはなかった。
宙に横たわるムウの体にかけられた細縄は
揺さぶられるたびにきりきりと柔肌を食む。
縄は四肢に均等に散るのに、足指だけがじわりと痛い。
背後から深々と貫かれたそこは、すでに熟れくずれて
白く濁った汁をしたたらせている。
サガは眉一つ動かさずに、そこにさらに指を埋めてくる。
その侵入は、散々に弄ばれて意識が遠のきかけていたムウを また強張らせた。
「力を抜くんだ」
「い……や」
頭を振ろうとするが、顎を押さえられ深く口付けられる。
「嘘をつけ」
同時にすぐ背後から耳たぶをねぶりながら同じ声が低く響いた。
そのたびにムウの体はビクリと震え、カノンは楽しげに喉をならす。
背後から激しく衝かれ、開放されたばかりの唇から悲鳴があがる。
「あっあああっあ…あ」
「やめないか」
そうたしなめつつもサガは四本目の指を付け根まで差し入れた。
「あう…っ」
焼かれるような痛みにムウは背を反らせる。
幸いそれはすぐに引き抜かれた。
「まだか」
「さすがに…な」

サガはムウの口にウゾを流し込んだ。
独特のアニスの香りに混じって、何かがピリッ…と鼻腔を侵す。
「う…」
気付いたときにはムウは液体を嚥下していた。
「ッ…何を…」
サガは無言でムウをじっと見つめている。
その思いつめたような眼差しがムウの不安を煽った。


…自分は何をされてもおかしくはない。
たとえ今のが毒薬であったとしても
ムウには抗う理由がないように思えた。



男の愛を手酷く裏切る。
そんな使い古されたやり口は、首尾よく運んでいたようだった。
半年ほど交際すると、ムウはサガに軽蔑されるためだけに何人もの男と寝た。
そしていよいよ彼の実弟と通じたことで、復讐は終えるはずであった。
…これで我が師もお喜びになる、何よりも半端に抱えた情が思い切れる…と
思っていたのに。
気が付いたらまた、双児宮を訪ねていたのだ。
サガの寝室でムウを出迎えたのは弟のカノンだった。



酔いが回ったのか、ムウは急に視界が曇るのを感じた。
強い眩暈に思わずかぶりをふろうとしたが、首も、顔もぴくりとも動かない。
「…そろそろか」
カノンはそう言うとムウを貫いていたそれを一度引き抜いた。
縄が緩められ、ムウはカノンの腹の上に背を預ける形になった。
無様に開ききった脚を閉じることもかなわない。
触れられている感覚はあるのに指ひとつ動かせないのだ。
「…う」
必死に声を絞りだしても呻きがあがるだけだ。
サガは優しく笑んで唇から次々と零れる滴をぬぐう。

腰がかかげられ、背後からまたゆっくりとカノンが入ってくる。
一度貫いて浅く引き戻したその、くびれた部分と入口との僅かな隙間に、
サガが己を埋め始めた。
「うう…ッ」
そこが限界まで押し広げられるのが、ムウにははっきりと分かった。
体が二つに裂かれるようだった。
不思議なほど苦痛はない。
むしろそれがムウには恐ろしかった。
ムウは必死で混乱する思考を繋ぎ止めた。


なぜこんな…と問いかけたムウは、自分は今まさに「共有」されているのだと了解した。
もとよりムウは双子のどちらとも別れるつもりだった。
だがそれを告げると二人は、「どちらのものにもならないということは、
どちらのものにもなればよい」という超理論を展開した。



あの日、カノンとの情事の最中に帰宅したサガは、その光景に一瞬言葉を失ったが、
「おまえもか…」
と静かに呟いただけだった。
カノンはそれに「よう」と答えたまま抽送を止めようともしない。
…打擲されるとばかり思っていたのに、
サガにとっては逆上はおろか、動揺するほどでもなかったのかと、ムウは半ば失望した。
そしてそんなふうに考える自身にも腹を立て、ムウはことさら大仰に声をあげた。
すると信じ難いほど高く昇り詰めていった。

「なあ兄さん…」
カノンはムウの背を抱き腰を進めながら甘えるように言った。
「オレにこいつをくれよ」
「駄目だ。これはわたしのものだ」
冷たい声でそう言い放つとサガはムウの髪をつかみ顔を上げさせ、
その唇をこじ開けて無理にねじ込んできた。
突然の侵入に息がむせるのも構わず口腔を往来させる。
「ん……んんッ」
「おい…乱暴だな。だから愛想をつかされるんだぜ」
「黙れ」
サガがムウにそんな仕打ちをするのは初めてだった。
反射的に動く腰をとらえ、カノンもまたさらに背後から衝きあげる。

その後サガとカノンはムウを交互に犯した。
ムウを拘束しては、口を極めて罵り、サガの趣味でもあった玩具で辱めながら、
二人は競いあうかのように、夜通しムウを苛んだ。

そして今。
それらにすら物足りなくなってしまったということだろう。
もはや快楽の多寡はさしたる問題ではなかった。
争いが許されない立場である以上、互いが手放そうとしないならば
来るべくして訪れた結末だったのかもしれない。


わずかな光がサガの相貌を浮かび上がらせた。
その苦悶に歪む顔は凄みを覚えるほどに美しい。
…そうだ…わたしはずっとこの顔が見たかったのかもしれない、とムウはぼんやりと考えた。
背後からも苦しげな呼吸が聞こえる。
部屋の奥に置かれた大鏡にはカノンも同じような姿で映っていることだろう。
そしてまるで屍のようにつるされたこの体も。

楔がすすむごとにオイルと残滓とがまざりあい、卑猥な音を立てて溢れてゆく。
サガとカノンは、まるで分かたれた二人が一つに戻るかのように
慎重に呼吸を整えながら、動きを合わせている。

ほどなくして二人はゆっくりと奥に到達した。
下肢に異常な圧迫をうけて壊れた人形のように足先だけがビクビクと動く。
「凄いな…入ったぜ」
「良い子だ」
サガは目を見開いたままのムウに深く口付けた。
呼吸が奪われ、さらに中がきつくなる。

カノンはムウの首筋を噛んでは指先を胸に這わせ、なぶりはじめた。
サガはムウ自身を両の手でとらえて責め立てる。
声も出せない肉塊に成り果てているにも関わらず、ムウはあっという間に張り詰め、
体の芯が熱く解けはじめるのを感じた。

…こんなときに…!
己の浅ましさにムウは死にたくなるほどの羞恥を覚えた。
壊れてしまえばいいと幾度もわが身を呪ったものだが、
今ほどそれを強く願ったことはなかった。


…こんなときに。
サガはなぜ涙を流しているのだろう。
狂っている。
こんな愚行に乗るカノンも何なのだ。
二人とも狂っている。
とくにサガは本当に理解に苦しむ男だった。
部下たちと、時には敵方も見境なく喰い散らかすムウに、その誇りを散々に傷つけられても、
サガはいつもムウを許した。
「おかえり」と寂しげに笑いながら。
憎しみをぶつけても、無理もないと受け流されるばかりでいつも苛立つのはムウのほうだった。

…もううんざりだ。
このまま四肢を裂かれたほうがどれほどましだろう。
ムウは身じろぎもできずに溢れ出る熱に耐えた。

サガはムウの汗と涙を拭い、震える頬に口付ける。
背を流れる汗が次第に冷たくなるのをムウは感じた。
もうすぐ薬が切れるのだろう。
ムウはその瞬間をただひたすら待った。
精神を砕き肉の呪縛を解くほどの苦痛を。
もしも魂があるのならそんなものこなごなにして欲しい。

「……ッ」
はたして苦痛は稲妻のようにムウを襲った。
だが爛れた神経にはそれは快楽以外の何ものでもなく、
ムウは抗うこともできず波に飲まれ押し流されてゆく。
「う…ああ…あ…い」
しばらく吐精と痙攣を繰り返したムウの体はなお、何かから逃れようとするかのようにもがく。
「もうオレたちじゃないと満足できない、だろうな」
耳元でカノンが囁く。
「フ…違いない…」
二人は身をよじるムウを押さえつけては思い思いに追い立てた。
いつものようにサガは「わたしは罪深い」と叫んで達し、
兄を嘲いながらもカノンも果てた。
その凶行と、重なる絶頂はすでにムウの正気を奪っていた。
脳裏に、目の前にまで火花が散り、薄れゆく意識のなかでムウは幻を見た。
瞬く星々が幾筋も尾を引いて半球を流れ落ち、天は白い炎に包まれる。
…そう…だ。
なにもかも燃えて跡形もなく消えてしまえばいい。
わたしも、わたしたちも。
愛してるというあの、悲しい言葉も。
「…ああっああ…あ」
気が付けばムウは子供のように泣きじゃくっていた。






終わり


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気がつけばいつものサガムウ、サガ→ムウですね。
ええと、つまり一本多いというそれだけの話です。
毎度、天気しか背景描写がなくってお恥ずかしい。
大人の懐深いサガを書こうと思っていたのですが;
隠し味がずっと隠れてしまってる的パターンです。
タイトルはhemisphereにささぐ、という意味です。


2011.10.17.






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