○第三幕第二場
日が傾くころになって双魚宮のプライベートスペースから姿を現したムウの足下に、駆け寄ってまとわりつく犬ころが2匹。
もとい。
そのような犬ころ並みの行動をとるのは、聖域の誇る黄金聖闘士の、中でも当代最強を謳われるジェミニのサガとバルゴのシャカ。
「ムウ!」
「待ちくたびれたぞムウ!」
いや、ムウに言わせれば、「勝手に待っていたのはあなたたちでしょう」というところなのだが。
しかし。
やや考えてから、ムウは一つ軽く肩で息をついて――。
それから、ごくやわらかな笑みとともに二人の顔を見比べて、言ったのだ。
「大したものはできませんが、たまには私のところで夕食でもいかがですか」
と。
サガは目を瞠り、シャカは思わず目を開いた。
「本当か、ムウ!?」
「無論喜んで呼ばれるとも!!」
「そうですか。では、どうぞ、いらっしゃい」
そう言って歩きだしたムウのあとに、サガとシャカはいそいそとついてゆく。
「ただし、ケンカはやめてくださいね」
「きみがそう言うなら、この鼻持ちならない男の言動を我慢するのもやぶさかではない」
「それは私のセリフだ!」
「ホラもう、言ってるそばから……」
「いや、すまぬ、ムウ。今のはつい口がすべった」
「それは弁解になってないぞ、シャカ」
「黙りたまえ。きみがなにか言うと癇にさわってならぬ」
「それもこちらのセリフだ。少し黙っていろ、シャカ」
「いい加減になさい。白羊宮の壁や床に傷一つつけても、二人まとめて即刻追い出しますからね」
「そんなことはしないよ、ムウ」
「私もしないとも」
「私はムウの顔を見ていられるだけで幸せなんだ」
「ふん。似合わぬ点数稼ぎはやめたまえ、サガ。きみがそんな殊勝な男か」
「黙っていろと言うに。私はきさまとは違って紳士なのだ」
「それ以上言うと地獄の獄卒に舌を抜かれるぞ」
「私を嘘つき扱いするのか!?」
「本当のことであろう」
「黙れ! この、煩悩だらけのエセ解脱男が!!」
「なにを言う!? 私は悟っているぞ!! 私の一生はムウに捧げるためにあるのだとな!!」
「ふざけるな!!」
「いい加減にしなさいってば!!!!」
――と、いうような。
喚き合いつつ石段を下ってゆく3人のその有り様は、ある意味では平和な光景と言えるものながら。
もしかしたら、アテナや、今は亡き前教皇が見たら、その情けなさに眉をひそめる(前教皇ならば思わず一徹返しする)ような事態なのかも知れなかった。本当は。
■終幕■