ムウは隣で平和に寝息をたてはじめた。

それにしても。やられたぜ。
これほど我を忘れたことなどひさしぶりだ。
「……」
なんとなしにムウの顔を眺めていると突然、急速に血の毛が引いてゆくのが分かった。
我に帰るとはこういう瞬間を言うのだろう。

…なんてこった。

ついに男とやってしまった。
…しかもよりによってあのムウとだ。

昨日あったばかりのシオンの姿までが脳裏を掠める。
このことが知れたらただではすまされまい。。

動揺しているのか、疲れているのか、 かろうじて煙草に手を伸ばすが指先が震えてうまくいかない。
「くそっ・・」
俺は煙草の箱を壁に投げつけるとベッドに倒れこんだ。
ともかく、寝よう。俺は強引に目をつぶる。

もうこれ以上の悪夢もあるまい・…。

翌朝。
寝室の窓から差し込む朝日で俺は目が覚めた。
ムウはやはり隣にいる。
あれは夢じゃなかったということを激しく再確認してしまい、起きぬけに死にたくなった。
いたって穏やかなムウの寝顔。しゃくだがやはり綺麗な男だ。
…顔だけみていればこいつも目の保養になるんだがなあ。。
しかしどんなにやさしい顔をしていようと、こいつは間違いなく、男。
こいつのせいで俺は…

昨夜のことを考えると頭が痛くなってきた。
寝息をたてるムウの剥き出しになった肩が、腕が、…脚が、やけになまめかしい。
眩暈までしてくる。
二日酔いか?…しっかりしろ、俺。
ムウが起きそうな気配を察した俺は慌てて背を向ける。
どんな顔をしたらいいのか知れず、俺はとっさに狸寝入りを決めこんだ。

「おはようございます」
「・・…」
「よく眠れましたか?」
…よくもそんなことがいえたもんだな!とそう思ったが寝たふりに徹した。
「怒ってますか」
「・・…」
「…ねえ、デスマスク。」
「・・…」
何を言おうと無視だ。
俺の背に奴の手が触れるのを感じた。
「やはりあなたはあたたかいですね」
そういいながら俺に敷布をかけなおす。

「昨日…あなたに嫌いと言われて本当に悲しかったのですよ」
こいつ…心臓に悪いことを言う。
嘘には思えない・…また騙されているのだろうか。
「…寝てるんですか」
「寝てる」

ムウがクスリと笑った。

…起きるタイミングを完全に失った俺は、
このまま死ぬまで寝てようと思った。
(終わり)

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