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ああ。 わたしは溜息をつく。 ・・・また途中から記憶が無い。 その間何をされたのかも知れないし 何を口走ったかもわからない。 ・・・なぜシャカとばかりこんなに大変なのか あれから不審に思いシャカと数回寝てみたけれど 結果は同じだった。 ここのところ夜もなく昼もなくずっと敷布の上だというのに 慣れるどころか慣らされた体は もっと深いところで絡みあうようになってしまった。 底のない淵のように快楽の深さばかりが次々と更新される。 なによりシャカの肌に触れているという事実が耐え難い。 肌や固い腰やさらさらと流れる髪に触れるたび シャカがシャカであることを思い知らされて胸が苦しくなる。 その手は温かすぎて、近すぎて。 このままではいつか耐え切れず離れてしまうに違いない。 「どうしたのかね」 わたしが苦々しい顔をしているのを見咎めて シャカはまた顔を近づけてくる。 わたしは上記のようなことをかいつまんで話した。 「何故なんだろう」 「簡単なことだ」 シャカがこともなげに言った。 「わたしが君を愛しているからだ」 「・・・・・・」 ・・・シャカにまともな答えを期待するなど わたしもそうとう頭に血が昇っている。 また溜息をついてしまった。 はぐらかされたのかなんなのか。 「愛・・・ね・・・わたしは君に甘えているだけで 愛してなんかいない」 シャカはそれには動じず、さも悟ったような顔をしている。 「君はそこにいるだけでよいのだよ」 君はいつもそう言うが。 だがどう考えてもそれはフェアではない。 息苦しさがつのった。 ・・・おそらく君といて、悦んでいるのはわたしの体だけだ。 君自身はともかくとして、わたしは君の愛をうけるにふさわしくない・・・と 口にしようとして、はた、と気づいた。 …サガも。 サガも同じことを言った。 彼も似たような気持ちなのだろうか ただただやりきれなくて・・・苦しい。 わたしが泣いているものだから シャカが唇を寄せてきた。 何度もわたしの頬に、額に口づける。 他の男のことを考えているとも知らず。 わたしなど君に誅される悪鬼のように 踏みにじられればよいのに。 「最高の賛辞だな」 シャカの唇が首筋に降りた。 「何が・・・だ」 「悔しいほど良い、というのは」 シャカの手がまだ濡れたままの内股にもぐり その指が脚の付け根を軽くなぞり始める。 「…っ・・・あ」 乾ききらない澱を絡ませて焦らすように周囲を這う指に おのずと腰が浮いてくる。 「わたしのせいにしているようだが」 「・・・う・・・っ」 軽く開いた唇をこじ開けてもう片方の指が口腔を犯す。 「貪っているのは君のほうだ」 思考はすぐに煩悩に追い落とされた。 歯をたて抗っても構わずにシャカの長い指が奥へとすすむ 同時に背後から攻められ、 串刺しにされるかのような錯覚に陥る。 涙と涎とが絶え間なく溢れ落ちた。 余計なことなど考える暇もないのはある意味ありがたい。 何度か達したあと、ようやく解放された。 シャカはこれから入ってくるのだろう。 すでに背が軋み、関節は疲弊している。 それでもシャカの気配を感じたわたしは 受け入れやすいように背をそらした。 待ちかねて入ってくるシャカはいつも嬉しげで その瞬間だけは彼になにがしか報いているような 幻想を抱くことができる。 入り口がくつろげられわたしは黙って目を閉じた。 しかしその瞬間、強烈な違和感を覚えて振り返った。 「シャカ?」 背に消えたのは見覚えのある組紐の房で・・・ まさかと思った瞬間に全て押し入れられた。 「・・・・・・!!・・・・!!!」 異物の強烈な圧迫感に冷や汗が零れる。 シャカはそんなわたしを見下ろすといった。 「罰を望んだのは君だ」 …この男には考えなどすべて筒抜けということなのか? なんてことだ。 108の珠がぎりぎりと音をたてひしめぎあい、 痛みと快楽の境が押しつぶされてゆく。 「苦しいかね」 自分がどんな顔を晒しているかしらないが、当のシャカまでもが そんな気遣いをする。 動くたびに無機質な感触が次々と内奥をえぐり 退けようにも念動力がきかない。 どうやら動かしているのはシャカの意志らしい。 「シ・・・やああああああっ」 抗議をしようと頭をもたげた瞬間、背をビリビリと 快楽が貫いてわたしは果てた。 なんどか山を迎えてようやく落ち着いたわたしに シャカは声をかけた。 「・・・大丈夫かね。ずいぶん盛大に気をやったようだが」 「・・・だ・・・・・大丈夫なわけがあるか!いや、入れるにしてももっと、 …ほかに、なんかあるだろう!! 人がどんな思いでこの数珠を握り締めて冥界を走っていたかなど、 考えたこともないのか馬鹿! その前に神仏に謝れ!!」 息のかぎり全力の抗議をする。 「安心したまえ。神仏にはお許しを得ている」 「・・・得るなそんなもの!」 暴れるわたしを抑えながらシャカは真面目な顔でつぶやいた。 「君が望んだのだ」 しかし次の瞬間その声音は喜色を帯びた。 「言ったはずだ。君の望むことならなんでもすると」 シャカはまともに息もできずにいるわたしの目の前で印を組むと 真言を唱えはじめた。 その途端、中の数珠が生き物のようにうねり出す。 「・・・や…めろ やめ・・」 わたしは腰が痛いのも忘れてベッドの上を転げまわった。 まさに文字通りのたうちまわったといえるだろう。 まったくシャカへの怒りだけで正気を保っていたと思う。 どれほどそうして遊ばれただろうか。 ようやく解放された、と思った瞬間、 こともあろうにシャカが自身をうずめてきた。 数珠はそのままで、である。 「・・・・い・・・っ」 「さすがにきついな」 あまりの苦痛に一瞬何が起こったか分からなかった。 「痛かったら言ってくれ」 痛かった。 とてつもなく痛かった。 だがもう小宇宙ですらまとめられない。 シャカ自身ですら相当に痛いだろうに シャカは苦しそうにしながらも冷静に珠の位置を並べ替えなどしている。 「これでよし」 ・・・よし、じゃない!!! わたしは首を左右に振って抗議した。 だがシャカは薄笑いを浮かべたままだ。 わたしの拒絶は聞こえているはずだった。 しかし中央に触れられるとわたしの器官はこんな状況でも 快楽を得て張り詰めている。 「いくかね」 シャカがゆっくりと動き出した。 終 |