※ラダマンティス×ムウ。脳内劇場(拙サイトの内輪話)設定80より。
微妙に塩味、ちょっと痛いです注意。一応性描写があるのでR18。
どこにあったか不明というご意見いただいたので、再掲しました(2013年5月3日)。
不案内なサイトで申し訳ないです。リンク切れ、場所不明などお問い合わせ歓迎です。











Highlanders









「それがな…」

カノンは言いにくそうに口篭もった。
今日飲る酒を忘れてきた、というのも可笑しな話だったが
奴の口から出た言葉はもっと可笑しなものだった。




      *  *  *  


部屋の鍵は開いていた。
「気が進まなければ、酒だけ持って帰ればいい」とまで言うカノンの言葉に
オレはここまで来た。

部屋の隅にいた先客は、オレの姿を認めると反射的に立ち上がった。
こちらを向いた顔に、オレは少なからず驚いた。

…アリエス。
いつかハインシュタイン城に紛れ込んだ黄金の一人だ。
気配は別人だが、たしかにあのときの男だった。


「なぜあなたがここに」

向こうも驚いた様子だった。

「…それはこっちの台詞だ」

オレは卓上に目をやった。
カノンの酒とグラスが二つ並んでいる。
どうやら部屋を間違えたようではないらしい。

アリエスは暖房もないこの部屋にバスローブ一枚だ。
カノンは「行けば分かる」と言ったが、なるほど…そういうことか。


「仮にも女神の黄金聖闘士が男娼まがいの…」

「それ以下です」

自嘲気味に吐き捨てるとアリエスは再び寝台に腰を下ろした。

「…帰っていただいて結構です」

言葉とは裏腹に何か思いつめたような声音だ。
ベッドに剥き出しに投げ出された両脚はコットンの生地よりも白い。
オレはそれには答えず、部屋の奥に回るとオイルヒーターを点けた。

「寒くないのか」

「いえ…」

オレの行動を計りかねてか、こちらを見ている。

一脚しかない低いソファーに腰をおろすと、オレはボトルを空けた。

「もらうぞ」

ハイランドパーク、25年。蜜に似たほの甘い香りが立ち上る。
オレは両方のグラスに注いた。
コクのある香りが鼻腔に満ちる。
いつもの12年よりはるかに濃厚だ。
オレは口に含んでしばらく味わうと一気に干した。

…ようやく体に血がめぐり始める。
大きく息を吐くと椅子に背を預けた。
アリエスはこちらの様子を伺っていたが、
オレが促すともうひとつのグラスを手にとった。

「…いただきます」

飲みなれていないのだろうか、多めに口にしては変な眉をひそめている。
オレに倣ってグラスを干さないだけ利口か。




三杯目が空いた。
次第に頭が冴えてくる。

アリエスは半分以上残ったグラスを手に、何か思案しているようだった。
伏せた睫毛が長く、面立ちはまるで女のようだ。
女というよりも昔見たマリア像を思わせる彫刻のような冷たさだ。
それでいてどこか幼い。

オレは最初に見たとき女と見間違えたことを思い出していた。
こいつがギガント達を愚弄しパピヨンを倒したとはとても思えない。
奴らはこのアリエスを囲んで暴行したらしいが、
それによほど興を覚えたらしく、下卑た会話を繰り返していた。
天猛星麾下にあるまじき醜態と叱りとばした覚えがある…。


「こんな真似をしてまで男が欲しい…か」

アリエスは俯いたまま唇を噛んだが否定の言葉はない。

「いっそまた冥界に放り込めば、おまえに執着していたギガント達は喜ぶだろうな」

「構いませんよ…」

「ギガントは血の気が多く、パピヨンはまたゲル状だ。我が部下ながら、どんな抱き方をするかは保証の限りではないが」

「構いませんといったはずです」

強い語気に反して、嫌悪か恐怖か、目にうっすら涙が浮んでいる。
良くみれば頬には泣きはらしたような跡さえある。

「…そうか…」

オレは立ち上がりこいつの腕をつかんで立たせ、四杯目を口移しで飲ませた。
見た目よりも柔らかい唇に強引に酒を流し込む。
アリエスは最初こそ抵抗したが、すぐに諦め大人しくなった。

「…酔ってるのですか?」

「この程度でオレは酔わない」

だが困惑したようなその顔が好ましく見えるほどには回っているのかもしれない。
もうひとくち、ふたくち。
次々と飲ませるうち血の気のない頬がようやく染まり始める。
そのまま背後のベッドに押し倒すと観念したかのように目を閉じた。




バスローブの帯を解くと白い体が現れた。
思っていたより小柄だ。
さすがに筋肉は付いてはいるが、うっすらと脂肪が覆い、柔和な印象だ。
体毛もほとんどなく性器ですら色が薄い。
引き締まった腰と肉感のある胸や腿は確かに抱きごこちは良いだろう…。

…オレは冷静だった。
考えてみれば聖闘士の体をつぶさに見るいい機会かもしれない。
あの超人的な能力がどこから来るのか。
アリエスはオレの視線に居心地悪そうに顔を背けたままだ。

可笑しなものだ。
肉欲にかられたわけでも、ましてや想い合うわけでもないのに体を重ねる。
欲情のままに奪う浅はかな男が相手であればこいつも傷が浅いだろうに、
などと羞恥に耐えるこいつを見て思った。

「仮にも敵軍の将の前で、こんな姿を晒していいのか?」

そう言ったとたんにこいつの顔から胸元までがさっと赤く染まった。
彫像のような白い体が急に艶めいてオレは思わずその腹に手を伸ばした。
触れた瞬間はわずかに強張るが、筋肉は柔らかく、程よい弾力がある。

その手触りの心地良さに、気づけば無心に撫でていた。
掌の下で、ときおりビクリと体が跳ねる。
そこを軽く往来させるとあっという間に呼吸が浅くなってゆく。
こいつは恥じ入るように顔を背けつづけているが、
そんなそぶりを裏切るかのように、シャツに越しに伝わる熱が上がってゆく。

オレは呆れた。
…相当に飼いならされている。
どれほど多くの男に組み敷かれ「女」にされてきたのか想像に難くない。
そして、たとえそうと分かっていても、いやそれだからこそなおさら劣情を駆りたてられる。
カノンは「おまえは多分気に入るとは思うが」などと言っていたが、確かにその通りかもしれない。



部屋が暖まるのを待たずに、オレは服を脱ぎ、ソファに掛けるとふたたび寝台に上った。

「嫌と言ってももう遅いぞ」

「くどい」

こんな状況であるのに、強気な口調は変わらない。

もう一度、唇を重ねる。
やはりほんの少しだけ身が強張るが、オレの舌を追う余裕はあるようだ。
舌を吸いながら突きまくりたい衝動を押さえ、背を抱き、掌を滑らせた。

オレの腹の下に張り詰めはじめた欲望を感じたが、
それには触れずにひたすら胸をなぶると
面白いように背が反り腰が震える。
オレの肩にこいつの指が痛いほど食い込んでいる。

すでに硬い脹らみを爪で軽く左右にゆらすだけで甘い声で泣く。
そこに舌を這わせ、きつく吸い上げ、歯を立てると狂ったように善がった。
あれほど済ましていた顔はすでに陰も形もない。


「なんてザマだアリエス」

「言う…な…あ…あああっ」

叫びとともに腹の下で生温かい体液が広がる。

まさかとは思ったが、触れられることもなく昇りつめたようだ。

「…よくもそこまで堕ちたものだな…」

素直な感想だった。
アリエスは声を殺し屈辱に顔をゆがめ泣いている。
その様子はなぜかオレの血をひどく沸かせた。

これほど餓えかつえている相手に乞わせたらどれだけ愉しいだろうと思っていたが
そろそろオレのほうが自制の限界だった。

よく慣らされたそこはオレの指を、そしてオレ自身をすぐに飲み込んだ。
しかし中は熱く、次第にきつく締まってゆく。

すべて収めると丸い頬が僅かに緩んでため息が零れた。
緩く閉じた睫毛からのぞく瞳は明らかに快楽の色に濡れている。

より深くオレを味わおうとでもするかのようにまた目を閉じた。
わずかに上下させただけで、たまらないといわんばかりに睫毛が震える。
ギリギリのところまで来ていた俺も下手には動けず、
深々と息を吸いこんではその酔いに沈んだ。

「ああ…あっ…あ」

押し当てたまま軽く揺すってやるとまたたちまちに泣くような声をあげる。
いつのまにかオレの肩を押しやっていた手が腰に回っていた。

「それほど好いか」

「っ…」

すぐに背けた顔を無理に引き戻し、問いただす。

「言え」

「ああっ…く…うあっ」

強引に手繰り寄せた足首を掴むたびに中がびくびくと収縮する。

「どうしたアリエス」

「うあああっ・・ああい・・や・・」

暴れる肩先を押さえながらオレは下腹に力を入れさらに深くえぐるように腰を動かしはじめた。
すでに急所は知れている。
そこを通過するたび言葉にならない叫びがあがった。
たまらない。

「言え…!」

「あっあああ…ああっ…い…い…ああああああっ」

オレたちはほぼ同時に果てた。
達してからも何度もひくつく白い身体からオレは目が離せない。
まさに自らの欲望を喰らい自ら崩れてゆく。
オレも破滅的な傾向があるがこいつはそれ以上だ…。

オレは酒で喉を潤し、また口移しでこいつに強引に流し込む。
むせ返る様子にすら欲情したオレはまだ熱の残る体に押し入った。
滓が絡み、責め易さが増す。
激しくするほど叫びが甘くなってゆく。
どういうことだ。
あまりの快楽に息が苦しい。
どうしようもなく血が滾る。
初めて冥衣を着て、敵を殺めた時のような万能感に酔い痴れる。
「好きにしていい」というカノンの言葉を免罪符に、オレは力にまかせて蹂躙した。





そのうちオレはその充分すぎる反応に不満を覚えた。
どこもかしこも、都合よく整えられていると思い至ったからだ。

そのかたくなに閉じた目を見開かせてやりたいと思ったオレは
テーブルに手を伸ばし、カフリンクスをひとつ取ると
半分ほど残るこいつのグラスの酒に浸した。

達したばかりのアリエスはオレをくわえこんだまま目を閉じぐったりとしている。
オレは静かに金具を取り出し、交差部の爪を収めて棒状にすると
だらしなく液を垂れ流すその先端に差し入れた。

「うあっ」

さすがのこいつも驚いたようだ。

「動くな」

「な…何……を」

必死に身を起こそうとする肩を押さえこみ、
オレは指先でカフリンクスの意匠の端を揺らす。
左右に揺れながらそれは狭窄な入り口に無慈悲に沈み込む。

「嫌・・あ…あっ…あ…」

ガタガタと震えながらも腰がせりあがってくる。

「やはりな」

異常性癖か。
苦痛と快楽の垣根が無い。
オレは金具ごと掴むと腰を抱え、背後からもことさら乱暴に追い立てた。
アリエスは人が変わったような乱れようだ。
中が熱く痛いくらいに収縮し、金具が解けそうなほど蜜が溢れ出ている。

…仕込まれているにしても、限度というものがあるだろう。
どこまで好色な体なのだ。
呆れながらも、その異様さはオレをさらに駆り立てる。
すでに酒瓶は空だったがオレたちは互いをすすりあった。




      *  *  *  



何度目の絶頂だろう。

オレは白い波から羽ばたく無数の鳥を見た。

鈍く曇った灰色の空…オレの…故郷…

何も無い田舎の村で、いつも強い風が吹いている。

崖から零れ落ちるように鳥が飛び立ち、入り江には古びた舟が浮ぶ。

時が止まったかのようなあの世界が、はっきりと脳裏に浮んだ。

細い坂道に見知った顔。

草を食む羊の群れ、犬、老人…。


変わりのない暮らしのなかで誰もが穏やかに、ゆっくりと老いてゆく。

どうしてあのような世界が成り立っていたのか、不思議ですらある。

今となっては、なにもかもが幻のように遠い。

…。




記憶はやけに鮮明だった。
故郷は酒の中にしかないと思っていたが…

久しぶりに我を忘れるような情交をしたからだろうか。
思い切り打ちつけて何もかも吐き出した。
確かに何かの限界を超えたのかもしれない。




さっさと帰るつもりが、オレはしばらく腕のなかで眠るアリエスを見ていた。

「風が強いんだ…」

オレは我ながら意味不明な言葉を吐いた。

しかし寝ていたはずのこいつは

「…風は…止まないですね」

と、だけ言うとまた目を閉じた。

思えばこいつも寒々とした空を見続けたような目をしていた。





大人になってしまえば、他人と寝るということは大したことではない。
しかしやはり節制を欠いてはいけない。
敷布に残る温もりにすら心が乱される。


…気づいてはいた。
このアリエスに男がいないわけがないだろう。
「誰でもいい」といいながら、カノンだけを避ける。
子供でもわかるロジックだ。


カノンの双子の兄、ジェミニ。
自ら裏切り役に名乗りをあげたあの男。
オレは最初から虫が好かなかった。
配下として膝を折らせた小気味良さが蘇るが、すぐに空しくなる。



征服感はもうどこにもなかった。

風の音だけがいつまでもオレの中に響いていた。





















まだラダマンティスの性格がつかめてないので
いつか機会があったらまた書きたいです。110403

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