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* * * その日、ムウにはもう会うこともないだろうとたそがれていたカノンは教皇宮執務室の管理担当者から呼び出された。 慌てて出向くと執務室ではムウは床の修復を、サガは執務机を黙々と掃除していた。 担当者の話によれば二人はシオンにこってり絞られたらしいが、どうやらオレの話はしなかったようだ。 大理石の飾り板は左右対称に装飾されているから、カノンが壊した床面ばかりかもうひと間も張り換えるという大幅な修復工事になったようだ。 サガも布で拭くばかりでなく、入念に消毒までしている。 「す…すまん…」 カノンは黙々と石板を磨くムウに声をかけた。 「構いませんよ…。それより今度はサガが、あなたをお誘いしたいそうですよ」 「なん…だと」 「今度はあなたに見せつけて嫌がらせしたいそうですが」 「な…」 「わたしの身がもちませんから、断ってくださいね」 顔を挙げたムウの襟首の赤い咬跡にカノンは何かがふつっと切れるのを感じた。 「うそをつけ…」 ムウの手が止まる。 「好きなくせに」 ムウはそれには答えず、作業に戻っていた。 * * * 教皇宮の廊下を歩くカノンはどうしようもなくその血が滾るのを感じていた。 心満たされることがない体の関係はおそらくとどまるところを知らないのだろう。 「三人…いや、まさか四人…なのか」 …どうしてこんなことになったんだ。 カノンはため息をつく。 しかし正直に言うならいますぐにでも引き返しムウを押し倒して、今度こそはオレ自身で突きまくってイかせたい。 「………」 カノンは自身に呆れていた。 …こんな猿のような状態、小僧の頃でもなかったというのに…。 どうしてしまったのだ。 ムウは「悪魔」だというサガの言葉がよみがえる。 …やっぱりあいつのせいか…とカノンは舌打ちする。 「…エロ羊!」 「羊がどうした」 どこから聞き咎めたか、突如として廊下の角からシオンが表れた。 カノンはすかさず跪いて挨拶し事なきを得た。 は…早く出よう。 ここは…全体的に鬼門だ。 カノンは一人、教皇宮を後にした。 |