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○第一幕第一場 きょうもきょうとて。 今まさに、二人は口論のまっ最中。 場所は処女宮。 十二宮の奥側に立つのはシャカ。手前側に立つのはサガ。 「ムウに近づくなとなん度言えば分かる!」 「分かるはずがなかろう! ムウは私のものだ!」 「バカを言うな! 私のほうが彼のことを深く思っている! なにせ14年越しの恋なのだからな!!」 「14年もアプローチしつづけて結論が出ないというのは、つまりそういうことではないか。みっともないな、きみは。潔く身を引きたまえ!」 「ふん。おまえこそ、ムウが雌伏しているあいだしょっちゅうジャミールにいっていたというわりには未だにムウをモノにできていないではないか」 「私は慎ましやかなのだ。今まで無体にムウに迫ったり、不躾に気持ちをぶつけたりしてはこなかったゆえ、ムウもはっきりそれとは気づいていないのだ。 尤も、薄々は私の思いに勘づいていて、はっきり言ってもらう日を心待ちにしているのやも知れぬが」 「愚にもつかぬことを。大体、慎ましやかという言葉の意味を知っているのか? おまえが慎ましやかであるなら、世界中のゴールデンレトリバーは内気で慎ましやかな犬種だと言えるだろうよ」 「私と犬畜生を同列に置くのかね!?」 「問題はそこではない!!」 「ふん! いずれにせよこんなところできみと話しているのなど、時間の無駄だ」 「どこへいく、シャカ!?」 「どこでもよかろう」 「白羊宮か!? そうはさせぬ!」 「やるつもりかね!?」 「バカ者! 私闘は厳禁だ!」 「ではそこをどきたまえ! 私は下へゆく!」 「ならん!」 ……と。 そんなこんなで不毛な会話(喚き合い)がつづき。 やがて、シャカとサガには少々疲労の色が浮かんできた。無理もない。 どんな建設的な結論も得ることができそうにない、しかし無駄に頭だけは使う言い争いなのだから。 そしてサガが一つ、肩で大きく息をついた。 「――シャカ。毎日我ら二人でこのようなやりとりをしているのでは、なんの解決にもならないどころか、双方にとって一つのメリットもない。 それどころか、時間を食うばかりで、ムウの顔を見にいくこともできん」 「きみが私の邪魔をするからではないか」 「うるさい。とにかくだな、私はムウに会いたい」 「そんなのは私とて同じだ」 「それに、二人でこんなことをしている間に、どこからか鳶がやってきてあぶらげを攫っていかないとも限らない」 「ムウはあぶらげかね」 「バカ者、それは比喩だ」 「先ほども思ったのだが、きみにバカ者扱いされるとは心外だ」 「うるさい。ともかく、私には一つ提案がある」 「……なんだね?」 シャカは閉じた瞼の上の眉をわずかにひそめた。 ………… |