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エピローグ 目覚めると見たような白い壁がわたしを囲んでいた。 「気がついたようですね」 そこにあの男が立っていたのだ。 「おまえ…」 ムウがいる。ということは… 「わたしも死んだのか?」 「ええ。何回も」 楽しそうな笑みをうかべてムウがわたしを見つめる。 わたしは海岸に打ち上げられていたという。 聖域を去ったのは随分昔のことなのに、ムウの顔を見たら、つい昨日のことのように思えた。 「ムウ…」 夢だろうか…その白い手に触れようとした瞬間、わたしの頭の中で 「待った」がかかった。 『待て。待つのだ』 ちょっと待て。 それはわたしの台詞だ。 「…なぜサガまで生きているのだ?」 「アテナにお願いしたのです。あなたたち二人はどちらも欠いてはならない存在だからと。」 「待てムウ。だからといってこのからだに二人を同居させてもいいというのか」 『とりあえず適切な処置ではなかろうか』 「サガお前は黙っていろ」 ムウはさも何事もないように、われわれの会話を遮った。 「では…便宜上、あなたの方を黒」 「何だクロとは?犬かわたしは」 「あの人のほうは白と呼ぶことにしました」 「ウワーハハハ、シロのほうが、よほど犬だな」 『問題はそこか』 「聖域がにぎやかになりそうですね。」 ムウはそれはそれは楽しそうな笑みを浮かべた。 よく考えればこのムウがあれしきで死ぬわけではないのであった。 『死んだふりを見分けられないとはお前でも動揺したのだな』 …うるさい。貴様こそこの世に何の未練があるのだ。 『わたしは自分が間違っていたと思ったのだ』 …今でも充分間違っているだろう。そう思うなら、さっさと消えたらどうなのだ。 『お前の言うとおり、私も自分の欲望とやらに正直になってもよいと思えるようになったのだ』 …だったら何だというのだ。 『礼を言うぞ』 …本当にありがたいと思うなら引っ込んでいろ。 『しかし…お前が泣くなんて』 …殺されたいか貴様。 『わたしも言われたことがなかったのだが』 …何の話だ。 『ムウの言葉だ。お前を「愛している」と。』 ふと、あれも芝居だったのではないか。そう思ったとたん、全身の血が逆流するかのような眩暈に襲われた。なんということだ。このわたしが動揺しているというのか。まさか…。 『あれには妬いたぞ』 …言っておくがな。サガよ。ムウは「わたし」と契約したのだぞ。おまえの出る幕ではないのだ。 『それはどうかな』 …貴様…。 サガとの口論も随分とひさしぶりであったからか、なぜか他愛ない。 …兄弟喧嘩とはこのようなものではなかったか。 われわれは罵り合いながら、朝の白羊宮に向かった。 『そんな馬鹿な』終わり |
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…実は、十数年前初めて書いた二次創作です(大恥)。 最初に書いたのは、ポエムもどきで始まる後半から エピローグ(scene6-8)までで、黒サガが自分の気持? に気付いて終わり、の救いのない話でした。 (その後、彼は聖域を去り、諸国を遍歴しながら 悔恨と贖罪を経て真に神のような男になる…とか 妄想してました。すでに星矢ではない(笑)。) 後から書き足した前半、台詞が無駄に演説調なのは、 当時読んでたサドの『恋の罪』の影響かと思われます。 主人公が「悪いことするぜ〜!」と天に向かって 延々宣言するあたりが、なんとも黒サガっぽくて。 小僧の頃はその背後に横たわるカトリシズムなど 何も知らずに…でもなんとなくサガの潔癖さって、 厳格な聖職者のそれのようなイメージが…(勘違い) ああっもう全て恥ずかしい、まさに若気の至りな文章です。 …再燃の折、コピー本に掲載時にエピローグをつけました。 いきなり死にオチというのはさすがにまずいと思いまして。 …そしてろくに直さずに売ってしまってごめんなさい。 無修正版をお持ちの方々には、重ねてお詫び申し上げます。 そしてこのような文章にお付き合いくださって、さらに こんなところまで読んでくださって、ありがとうございました。 自分でも読んでて何度途中で投げ出したくなったことか… でもこれ、載せるっていつかお約束したんで耐えました。 某さん、もうお忘れかもしれませんが…。 むしろ覚えていてえらいがっかりしてしまったかも…。 今更何を言っても遅いですね。 サガムウが好き!ってのが伝われば本望です。 2007年6月末日 油すま吉拝 |