三日前。
「ジェミニのサガは二人もいらぬだろう。」
黒いサガと会った翌日のことである。
シオンに見つかってしまったのだ。
耳の付け根の朱い痕跡。
それは大恩ある我が師の機嫌を損ねるのに充分だった。
「カノンもいる。そろそろあの黒いほうを始末してもよかろう。世界が平和になって良いではないか。」
「お言葉ですが、シオン…アテナの正義の盾を浴びてなお残っているのですから、黒のサガが必ずしも悪とは言い切れないのではありませんか。」
「なに?」
「それにもはや敵意のない者も許せぬほど狭量ではあらせられますまい。」
「ムウよおまえ・・・奴を弁明するのか?」
「滅相もありません」
「・・・あの男がそんなに良いか」
「違うと申し上げているのです!」
「わたしに意見するな」
「・・・・」
それは「わたしに逆らうな」と同義であった。ムウは思わず声を荒げてしまった自分を強く恥じた。 平静を装うほどにシオンに心の中を見透かされているようで、冷や汗が流れる。
・・・あの男・・黒いサガはシオンを殺したばかりでなく、赦しを受け、命を得た今でさえシオンに礼を言うこともないばかりか詫びの言葉の一つもない。不興を買うのも当然だ。


・・・やはり・・・私の選択は間違っていたか。 ムウは早々にあの男を始末せねばと考えを巡らせる。情けは無用だ。しかし非情になろうとすればするほど自分の中でその存在の大きさを思い知らされる。
・・・どうしたものか・・・。

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