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Scene 3 サガ(中身:主に白) 昨日の朝のことである。 サガは遅い朝食をとるべく、白羊宮に出かけていた。 「サガ。おはようございます。」 「おはよう、ムウ。」 『…』 「黒のあなたは相変わらず寝起きが不機嫌なのですね」 『うるさい。寝かしておいてくれ』 「昨夜は深酒をしていたようだ。まったく体を共有するこの私の身にもなって欲しいというもの」 「おや、珍しいですね。一人で飲むなんて」 「まったくだ」 「サガ、コーヒーでいいですか」 「ああ、もらおう。しかし私も少し頭痛がするよ」 「ではお水のほうがよろしかったか?」 『人を年寄り扱いするな!』 白羊宮に高らかな笑い声が響いた。 結局ムウはコーヒーをいれ、ミネラルウォーターを用意してくれた。 サガは目の前に置かれた二つのカップをぼんやりと眺めた。 ・・・わたしはこの二つの飲み物を同時に口にすることはできない…同じことではないか… 我々は成り行き上このような関係が続いているが果たしてムウはわたしと黒いわたし・・・・・二つの人格を等しく愛することなどできるのだろうか。 自分を見つめるムウのまなざしは常に、穏やかで、深い敬意に満ちている。 しかし黒の自分とムウが接しているとき、ムウは子供のように冗談を言ったり我がままにふるまったりする。そしてそんなときに限ってこの男の美しい瞳はをいたずらっぽく輝く。 …認めたくはないがおそらく… ムウはサガの表情が曇ったのを見逃さなかった。 「サガ…あなたはずっと私の指標でした。それは今でも変わりません。あなたとこうして会えることは何ものにも代えがたい…」 ムウはサガの手をとるとそこに頬を寄せ、静かに目を閉じた。 サガの強大だが不安定な小宇宙はムウの体温に落ち着きを取り戻したようだ。 成熟した男の皮膚の弾力をその頬に感じながらムウは言葉をつなぐ。 「しかし…師は黒のあなたを許してはいない。またあの人もシオンに謝ったりはしないでしょう。 …このままのあなたに会うことは師に反することになります。 あなたがこうして蘇った今、師は黒のサガを消せばあなたを許す、もしくは罪に問わないとおっしゃいました。…願ってもみない申し出ではありませんか・・・しかし私は反対してしまったのですよ。 ・・・しかしなぜそんなことを言ったのでしょうね。」 サガは茫然としてムウを見やる。自らも思い悩むムウに幸い彼の動揺は伝わらなかったようだった。 ・・・ムウ。おまえは自分で何を言っているか分かっているのか!? 「あなたと違ってなにせあの人は」 ため息交じりにムウは一人ごちた。 「あの人は・・・本当に仕方のない人ですから」 サガは「そうだな」、と微笑むとムウに悟られないようにゆっくりと手を離した。
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