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Scene 4 二人のサガ そして今日の朝。 「おまえ…本気か?」 サガは思わず声に出して黒のサガに答えてしまった。 十数年間自分を散々苦しめていた黒い自分が自ら消え去るというのだ。 『ああ。もう何もかも面倒になってしまったと言ったろう』 好き放題生きてきたこの男にいったい何の面倒があるのだろう。 いくら面倒だからといって自ら消えるなどと言うはずがない。世の中全てを消しても自分だけは生き残るような奴だ。 『だいたいおまえと一緒というのが窮屈でかなわんのだ』 「では・・・ムウはわたしがいただくぞ。よいな。」 『…奴がいちいち気に障る面倒な男なのだ。くれてやるわ』 「嘘をつくな」 『・…なんとでも言え。私は決めたのだ』 「ではおまえからムウに別れを告げるとよい」 『な…なんだと?』 「ムウと会いたくないとでもいうのか」 『そうではない…ええい、くそ、おまえになんかに分かってたまるか』 一方的に思考を切る黒のサガに、 苦しいのだろう、といいかけてサガは思考を留めた。 そんなことを確認しなくとも同じ体で胸の奥がねじれるような感覚に 陥っているのがわかるのだ。 …愚かな…。 そしてサガはまた自らも…ムウの昨日の言葉に深く傷ついていたのだった。 「あの人はわたしがいないと駄目なのです。だってあの人は…どうしようもない人ではないですか。」 そういって綺麗に笑ったムウ。わたしはどれだけ胸をかきむしられたことか。 奴には「わたしが必要なのだ」、と明言されたも同じではないか。 ムウよ…わたしとて、おまえがいなかったら…、おまえがいたからこそ、こうして生き長らえているのだ。 わたしの罪、シオンと…わたしの過去の罪と向き合うことが、そしてわたしの闇と向き合うことが わたしの贖罪ではあった。しかし許されたとはいえ、それが苦痛でない訳がない。何度また暗闇の冥府の世界にたち戻ろうかと思ったことか。自らの生が許せず、罪悪感にさいなまれながら生きるわたしの唯一の救い。 ムウ…。 それはおそらくあいつも同じはずであるのに・・・やつはどうしておまえを傷つけようとするのだろうな… おまえを泣かせ、怒らせ、…笑わせ…わたしの見たこともない表情を引き出してゆく。 ムウよ、わたしはどうしたらよい…。
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