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「…おまえたちがそうまであの男をかばいだてするとはよもや思わなんだが」 そうつぶやくとシオンはゆっくりと玉座に腰をかけた。 ムウとサガを除く全員が《あの男って誰?》と思ったことは言うまでもない。 「…別にわたしを殺めたことや13年間のことを今更云々するつもりもない。 アテナがお許しになったのだからな。そのうえで許すか否かというのはわたしの問題であろう。 そうだな。本人から直接に詫びの言葉を聞いたら考えてやってもよい」 《それは無理!》と今や「あの男」を知るものは皆思ったことだろう。 しかしサガは立ち上がった。 『教皇。わたしは13年前あんたを殺したサガだ』 全員がザワついた。そのサガが居ることすら知らなかったものもいたからだ。 『強いものが天下を取るというわたしの考えは変わらぬ。だからあの時のことも悪いなどとは思ってはいない。隙があったあんたが聖闘士として老いぼれだったのだ』 「馬鹿ーッ!ここで喧嘩を売ってどうする!?やはりおまえは大馬鹿者だ、死んで詫びろ!!」 サガは右手で自分の頬を張り倒すとそのまま数メートル左の壁に激突した。 『え…ええいうるさい!邪魔をするな』 瓦礫の中から顔を出したサガは髪の色こそ変わらないが、どちらのサガかは知れた。 「……おまえたち騒がしいぞ」 最悪の千日戦争に突入しかねない事態も、サガの壮絶なパフォーマンス?でその危機を逃れたようだっだ。 「確かにこちらに隙があったのは事実。わたしはあのときのことも、それから13年間野ざらしにされていたこともさして気にしてはおらん。他の黄金聖闘士たちも寛大にもおまえを許すというのだから、わたしも水に流そうではないか」 《ええ?許すことになってるのか??》例のサガにはいろいろいいたいこともある連中も多かったがこの会話に口をはさめるべくもなく。 『なら話がはやい。ムウをわたしにくれ』 「馬鹿者ー!!」 容赦ないアッパーを自らの顎に放ち、サガは大きく弧を描くと教皇の間の天井を支える柱の上部にめり込み落下した。 『ぐッ…サガ貴様…』 「そうじゃないだろう!馬鹿ッッ!!両手をついて"ムウをください"とお願いするのだ!」 《何でそうなる》と一部の者がサガの叱咤に心の声を挙げた瞬間、 『ムウをください』 「ムウをください!」 「ムウをいただきたい」 アルデバランとシャカがサガに負けじと揃って頭を下げたのである。 最前列の彼らに続く黄金聖闘士たちはあまりの事に土下座のまま固まってしまい、みな一様に頭を下げているかのようにも見える。 デスマスクなどは《俺は絶対いらねえ》などと思っていたに違いないだろうが、ここで口にだせるはずもなく。 話の流れは思いがけず妙な方向へ向かっているようだった。
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