なんともいえない沈黙が辺りを漂うなか、やにわにシオンが立ち上がった。
「うろたえるな」と一喝されるかと思った一行は体を硬くした。

「よかろう!小僧どもよ。力こそ正義というならこのわたしをいま一度倒してみよ。 とくにサガよ。ムウを望むとあらばわたしの屍を超えて行く覚悟はできていような」
『面白い!うけてたとう』
サガもすぐさま立ち上がる。
《とんでもないところに来てしまった》と撤退の準備をする黄金聖闘士。
「恐れながら教皇、私闘は厳禁では…」
「だまれ!」
『問答無用!』
アルデバランが口を挟んだが、一蹴されてしまった。

「サガよ、表に出ろ。この間を血で汚すことはまかりならん。」
『望むところだ』

シオンは仮面を取り、玉座に置くとサガとともに教皇の間の表玄関に出た。

いつのまにか日は沈み、空には星が瞬いている。
聖衣もつけず、互いに素手で対峙するということは負けたほうの死を意味する。
喧嘩程度であれば面白がって賭けをはじめる黄金聖闘士らも、ただただ遠巻きに二人の様子を見守るしかない。
とばっちりをうければ自分たちの身も危ういのである。

「やめるんだ、サガ!おまえ自分が何をしてるのか分かっているのか?!」
『うるさい、アイオロス。貴様は黙っていろ。』
「おやめください、シオン!」
「ムウおまえはさがっておれ」
文字通り、真剣勝負であるが、二人ともどこか楽しそうにも見えるのは気のせいだろうか。
ひとときの平和に飽いた聖闘士の血が騒ぐのだろうか。
それとも単に喧嘩っ早いだけなのだろうか。
互いに間合いを取り、重心を移動し、全身に小宇宙を巡らせる。
先手必勝…いや、光速拳の勝負では一瞬でも出遅れたほうが負けである。

『くらえ、教皇ー!ギャラクシアン・エクスプロージョン!!!』
「死ね小僧!スターダスト・レボリューション!!!」
互いに必殺拳を繰り出す。文字数はほぼ同じ。
クリスタル・ウォールを敷かないということは教皇は一気にしとめるつもりだ。
黒のサガもサガの邪魔は入らないらしく、全力で向かっている様子。

銀河の星々をも砕くお互いの拳は激しくぶつかり、しばらく中間でくすぶっていたが、今や明らかにシオンが優勢である。
やはり18歳と28歳という肉体年齢の差、いや、これが教皇シオンの強さなのだろう。
「わたしに逆らうなど100万年早いのだ、小僧が!」
『くッ…』
スターダスト・レボリューションがいくつもの軌跡になってサガに襲いかかる。

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