*        *        *



感覚が解放された・・・と思った瞬間、 全身を痺れるような感覚が貫いた。
「・・・??????」
たとえて言えば絶頂を迎えたあとの潮が引くような充足感と、
ともすればまた溢れ出しそうな瀬戸際の感覚。
頭が朦朧として目がかすむ。
シャカが瞳を開けていることに気がついたが
その姿もぼやけてゆく。
しかし四肢の感覚だけは怪しいほどに冴えていた。

「・・・何を・・した」
「君のことだ、めったなことでは口を割るまいが、
ここはあえて君の趣味に合うやり方を選んでみた」
「な・・に?」
温かいなにかが背中や腿を這うのを感じた。
気が付くと衣は両脚があらわになるほどたくしあげられている。
起きたらシャワーを浴びるつもりでいたから
素肌にバスローブをまとっただけでいたのだ。
両肩がはだけ、腕や胸が剥き出しになる。
触れた床の冷たさに、急速に体が火照ってゆくのを感じる。

髪をゆるく束ねた紐が解け、豊かな長い髪がその背を覆う。
その髪を根元から丹念に梳られ、自然に頤が上向いてゆく。
ムウが髪を愛撫されることに弱いということまで
何故この男が知っているのかは分からない。

「君は髪の毛一本まで私のものだ」
「そ・・んなわけがある・・か・・っ」
「ならば指一本も触れずに私のものにしてみせよう」

肩口から首筋、耳朶を弄られ、思わず、背をそらせてしまう。
積もる快楽を放たせようとしても四肢は依然として痺れたまま動かない。
自分の手足が自分のものでないかのようだ。
しかしそれでいて鳥肌が立つような感覚が体の芯に蓄積されているのが分かる。
胸を、腹をまさぐられるたびに甘い痺れが背骨を走る。
反撃をしようにも意識が散じてしまい、声をこらえるのがやっとだ。
「う・・・うう・・」
口惜しさで歯軋りをしたくとも、
絶え間なく押し寄せる快楽の波に歯の根が合わない。

シャカの青い瞳が白磁のような肌にふれるか触れないかの際をなぶってゆく。
そのたびに電気にも似た感覚が乗算され、堪らないほどの切なさが駆け巡る。
ムウの悦ぶところをあまさず熟知しているかのような動きは、日頃の観察の賜物であろうか。
肌には触れずその深奥から性感を炙り出すかのような愛撫が丹念に繰り返され、 限界にまで高められる。しかし決して最後まで許してはくれない。

「・・・シャ・・・カ・・・」
ムウはたまらず切なげな声を上げる
「白状する気になったかね」
「・・う・・だ・・誰が・・・・」
耐えがたい感覚があっさりと上乗せされる。
その身に錐を揉み込まれるかのような強烈な焦燥感。
もはやムウは声を上げることも出来ない。
汗と涙でムウの顔はしとどに濡れ、四肢は弛緩と緊張の
繰り返しを余儀なくされる。

戦士であるムウは苦痛ならいくらでも耐えることができただろう。
しかし体中の血がふつふつとたぎり、爆発しそうになりながら
出口を求めて渦巻いているかのような、この狂おしい切迫感にはどう抗ってよいか、分からない。
・・・いっそ地獄に落とされ、八つ裂きにされたほうがましだ・・

シャカは儀式でも執り行うかのように淡々と、しかし容赦なく責め続けている。
この男に許しを乞うのは絶対に嫌だ、その一点で
ムウの正気は保たれていると言って良いだろう。

シャカの、チリチリと電気を帯びたような小宇宙にとうとう中心を捕らえられ、ムウの体は大きく痙攣した。
「や・・め・・ああ・・あああ」
「・・狂いそうかね」
ムウの返事はない。
「狂ってしまえばよいのだ」
「あああああっ」
昇りつめようとする直前にまた、裏切られる。
「・・・く・・・っ」
嗚咽とも嬌声ともつかぬ長いうめきがムウの口から漏れる。
激しく肩で息をするムウの頬は上気し、乱れた髪の毛が幾筋も張り付いている。

「言いたまえ。誰を見ているのだ」
「知ら・・ん・・・・っ」
「許して欲しければ私を拝みたまえ。」
「断る・・・っ」
耐えがたい快楽に潤んでいてもなお、まだその目は光を失っていない。

「強情だな。・・・やむをえまい。」





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