******************** シャカは僕を町外れの丘によく連れて行った。 背後に川が流れていて、丘の上から遠方の山と町とが一望できる。 いままでこの町にいながら僕も知らなかった場所。 その丘には夏つばきの木が二本立っていて シャカはその下がお気に入りの場所だと言った。 なんでも樹木があるとよく「神様」が降りてくるらしい…。 「君はさ、本当に神様と話しているわけ?」 「当然だ。君は信じないのかね?」 「信じてるわけないじゃない。」 「じゃあ、君の鞄の中にある小さな袋は何かね?」 「交通安全のお守りだけど…」 「神を信じないといいながら君はそれを頼んでいるのではないか」 「別に…こんなのお飾りだよ。…じゃあ、百歩譲って、ほんとに神様がいるとして」 「ずいぶんと不遜な物言いだな。」 「どういたしまして。…どうして神様なんて居るの?」 「君はどう思うかね?」 「…気やすめ?」 「まあ、遠からず。神仏は人が頼み、祈るためにあるのだよ」 「じゃあどうしてさ、人は自分で作り出した神のために争うの? 人に戦いを強いる神様が神様なの?」 「神が戦いを強いているわけではない。その神の正義に対して戦いが起こるのだ。」 「正義のために戦う…そんなの欺瞞だよ。戦いが正義と言えるの?」 「正義となる場合も悪となる場合もある…つまりこの世は無常ということだ。絶対的な正義も絶対的な悪も存在しない。」 「じゃあ君は…そんなよくわからない正義に…命をかけるのを賢いと思う?」 「賢いとは思わぬが…そういう輩がいなかったら歴史の本など永久に閉じられていい」 「…そう」 シャカの言葉は静かだったけど、僕はその口調に押されて、黙ってしまった。 そのときは…君の言ってることがよく分からなかった…でも今は…神様でも仏様でもいいからお願いしたい シャカを返してほしい…って。 *********************** back Topへ戻る | |