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シャカは僕を町外れの丘によく連れて行った。

背後に川が流れていて、丘の上から遠方の山と町とが一望できる。

いままでこの町にいながら僕も知らなかった場所。

その丘には夏つばきの木が二本立っていて

シャカはその下がお気に入りの場所だと言った。

なんでも樹木があるとよく「神様」が降りてくるらしい…。



「君はさ、本当に神様と話しているわけ?」

「当然だ。君は信じないのかね?」

「信じてるわけないじゃない。」

「じゃあ、君の鞄の中にある小さな袋は何かね?」

「交通安全のお守りだけど…」

「神を信じないといいながら君はそれを頼んでいるのではないか」

「別に…こんなのお飾りだよ。…じゃあ、百歩譲って、ほんとに神様がいるとして」

「ずいぶんと不遜な物言いだな。」

「どういたしまして。…どうして神様なんて居るの?」

「君はどう思うかね?」

「…気やすめ?」

「まあ、遠からず。神仏は人が頼み、祈るためにあるのだよ」

「じゃあどうしてさ、人は自分で作り出した神のために争うの?
人に戦いを強いる神様が神様なの?」

「神が戦いを強いているわけではない。その神の正義に対して戦いが起こるのだ。」

「正義のために戦う…そんなの欺瞞だよ。戦いが正義と言えるの?」

「正義となる場合も悪となる場合もある…つまりこの世は無常ということだ。絶対的な正義も絶対的な悪も存在しない。」

「じゃあ君は…そんなよくわからない正義に…命をかけるのを賢いと思う?」

「賢いとは思わぬが…そういう輩がいなかったら歴史の本など永久に閉じられていい」

「…そう」



シャカの言葉は静かだったけど、僕はその口調に押されて、黙ってしまった。

そのときは…君の言ってることがよく分からなかった…でも今は…神様でも仏様でもいいからお願いしたい


シャカを返してほしい…って。


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