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○第一幕第一場 「サガ! 落ち着くんだ!」 「ホントにもーいい加減にしろって!!」 あわてふためくアルデバランとカノンを引きずるようにして石段を上ってゆくサガ。 前方に見える巨蟹宮の入口では、デスマスクが盛大に顔をしかめていた。 「バカ野郎! こっちくんな!! おれの宮を壊す気か!」 言いながら、頻りにデスマスクは背後を気にしている。なぜなら――。 「シャカ! おい、待て、シャカ!!」 そう。処女宮から下りてきた男がいるからだ。こちらも背中には、オロオロと落ち着かないアイオリアを連れて、シャカがずんずんと石段を下って巨蟹宮に入ってきた。 「やるなら白羊宮でやれー!!!」 デスマスクが頭を抱えて叫んだ。 が、ときすでに遅し。黒い髪のサガは、目を閉じたシャカに向かって大音声で呼ばう。 「出たな、“私の野望の邪魔をする人間その1”バルゴのシャカ!! きさま、どこへゆく!」 シャカはフンと鼻を鳴らして胸を張る。 「決まっているだろう。ムウのところだ」 聞いて、シャカ以外の居合わせた全員が、首を傾げた。サガは高く笑った。 「バカが! ムウは今、双魚宮だ。処女宮を通っていったのに気づかなかったのか? さてはきさま、例の瞑想という名の居眠りをしていたな?」 シャカは不満げに、秀麗な眉をひそめた。 「この私をバカ呼ばわりするきみも、なにやらきょうは邪悪な小宇宙をまとっているようだが、また愚弟に唆されでもしたのかね?」 「ふざけんな!! おれじゃねえ!!」 カノンが言下に喚いた。 「サガのアホが黒くなった原因はムウだ、ムウ! すべての元凶はあの色気ばっかり無駄にあふれてる羊なんだよ!!」 聞くや、シャカは眉をつり上げ、カノンに向き直った。 「“無駄に”だと!? 彼の色気は美点でこそあれ、無駄なものなどではない! 大体、きみは私のムウを侮辱するのかね!? ならば受けて立つが!?」 すると、今度はサガがシャカに詰め寄った。 「“私のムウ”だと!? 聞き捨てならんな! ムウは私のものだ!!」 「趣味のよいムウがきみのことなど相手にするはずがあるまい!」 「なにをッ!?」 ――と。 「はい、そこまで!」 パンパンと手を叩く音がして、よく通る声がそう言った。 一同が振り向くと、ムウが呆れ顔で立っていた。 その後ろには、どうやら野次馬をしにきたらしいミロとアフロディーテとシュラとアイオロスが。 ムウは、ゆっくりとサガとシャカのそばまで近づくと、二人の顔を順に見比べて、 「勝ったほうが左、負けたほうが右です」 と言った。 「さ、ジャンケンしてください」 唐突かつ意味不明の申し出ながら、ムウの妙な迫力に気圧されて、サガとシャカはジャンケンをした。 サガがグーで、シャカがチョキ。 結果を確認したムウは、サガに二歩近づくと、少し背伸びをするようにして、サガの左頬に唇をあてた。それから振り返り、今度はシャカの前へ歩み寄り、シャカの右頬にそっと唇を押し当てた。 口づけを受けた二人の顔から、毒気が抜けた。サガの髪も、見る間に色を失ってゆく。 「なんだよ、ずるいぞ! ケンカしたもの勝ちかよ!?」 カノンが喚いた。するとムウはカノンのほうを見て、言った。 「そんなはずないでしょう? サガとシャカは、次のロシアン――じゃない、変形版王様ゲームのときは参加の権利なしです。5人でどうぞ」 聞いたサガとシャカが、悲愴な顔で同時に叫んだ。 「そんな殺生な!!!!」 |