わたしは宮に戻り風呂に入る。ムウのところから帰った朝の風呂は格別なのだが、今日はシャカのせいで少々気分を害してしまった。
…愛しているか、だと?どうしてそんな得体の知れないものを気にするのだ。馬鹿者が。
わたしとムウの間はそんなあいまいなものは存在しない。
互いの欲望を充足させるという実に分かり易い契約に基づいてわたしはムウを所有し、ムウもわたしを楽しむ。…もっともわたしのかたわれ、――かつてのサガはあの男に随分と惚れていたようだが…。
しかしそれも過ぎたことだ。
わたしは今のムウとの関係にかなり満足している。
互いに束縛をせず、愛情をもたぬという約束が何よりも前提なのだ。
そのため無論わたしが何をしようと裏切りにはならず、ムウがどうなろうとわたしの知ったことではない。
これはサガ・・貴様にも言っているのだぞ。

『…恥を知れ…!』
黙れ。偽善者め。
わたしはおまえのようにおのれを偽って欲望を愛などにすりかえたりはしない。それにおまえはムウを清楚で優しく高尚深遠などと勝手に決め付けてその理想を慕っていただけではないか。ムウはそんな男ではないぞ。奴はおまえが知っている以上に貪欲でみだらな、そしてその本性は冷酷で残忍…
『…黙れ黙れっっ!』
とうとう出てきたな。サガ。

『……これだけは言っておくが、わたしが純粋に善でなくなったようにおまえもまた悪に徹せぬのだぞ』

…まったくいちいちうるさい奴だ。以前も貴様のせいでわたしの野望が潰えてしまったのだ。
いまいましい。
まあしかし、今このからだはわたしのものなのだ。貴様はじきに存在しなくなる。
・…うらむなよ、サガ。わたしのほうを選んだのはムウなのだからな。


鏡を見るたびにわたしは確信する。
ムウの判断はやはり正しかった。
この見事な肉体はあの軟弱なサガよりはるかにこのわたしにふさわしい。そしてこのからだゆえにムウはわたしに身をまかせるのだ、と。





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