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「あ……あ」

さっきの薬で滑って、先のほうはすぐに入った。
でも僕はもう早くも限界だと思った。
強烈な圧迫感に脂汗が出る。
息ができない。


サガ先生は机に張り付いたようになってた僕の手を取って
浮き上がったまま震えている僕の腰の下にまわすと
いつものようにあっと言う間に両手首をくくってしまった。

こうされると不思議に少し安心する。
何よりサガ先生に触れられて崩れそうな意識が戻った。

「…せ…んせ…い…」

ようやく声が出た。



「力を抜いて…」

そのときのサガ先生の眼差しはドキリとするほどやさしかった。
僕は思わず、初めて先生が入ってきたときのことを思い出した。
あの時も信じられないくらい痛かった。

それから、いろいろな無茶をされたときのことを次々と思い出した。
けどいつも先生は楽しそうで、こんなに切ない目をしてはいなかった。


僕は涙が止まらなくなった。

サガ先生に自分のしたことを改めて思い出したからだ。


…そうだ僕は許しなんて乞う資格はなかったんだ。


これが罰なら…この身が裂けてもいい。


「は…あ…あ…あ…あん…」
息を吐いて、できるかぎり力を抜く。

「そうだ…」
サガ先生はようやく生まれた僅かな余裕を容赦なく潰してくる。
骨盤がきしんで、背骨が悲鳴をあげる。
でもサガ先生の手は止まらない。


僕は…そんな強引なところも…好き…だから…

サガ先生になら…このまま…



「あ…ふあっ…い…や…あ…あ…あああああ!」
はいったと思った瞬間、僕は激しく射精してしまった。
そのガラスの円い縁が絶妙な角度で僕の中をぎゅうぎゅうと押している。
サガ先生が選んだそれはまさに僕のそこに当たってた。

衝撃と痙攣とで中が収縮すればするほどに強く刺激されて、
僕はまた、あっけなくいってしまう。

「うっく…っああっあああ…あああああっ」
何回も何回もそれが繰り返す。
頭の中を火花が散って心臓が破裂しそうだ。
自分の体と思えないほど腰が狂ったように跳ねる。
気持…よすぎて息ができない。

狭くなる視界で僕はサガ先生の姿を追った。
サガ先生はそんな僕を冷ややかに見下ろしてる。
綺麗なスーツには僕の精液がたくさん飛び散っていて…
だから怒ってるのかなごめんなさい
先生の目は…いまどうしてそんなに冷たい…の…


「…っああああんっ」
そう思ったとたん、強烈な電流が背骨を貫いた。
仙骨から脳天まで稲妻のように熱が走りぬける。

「ひ…あん…いやっ…っあんあっああっ…ん」

足先まで痙攣しているのに腰だけが重く痺れて
何かが次々に破裂しながら溢れだしてぞくぞくと背骨をのぼっていく。
「あっ…あ…あっ…」

恐い…止まらない。

…僕もう壊れちゃってる

ああ…ごめんなさいごめんなさい

サガ先生…先生…の…じゃないのに…こんな…僕…



「せ…せん……せい…せんせ……っ」
「少し騒がしいな」

そう言うとサガ先生は僕にハンカチを噛ませ、
浮き上がってる僕の肩を片手で押さえた。
ぼろぼろ崩れる僕を支えてくれてるみたいだった。
薬指の指輪が見えて僕はまた涙が出た。

そのとき、僕の中のガラスが動いた。
サガ先生…だ。
限界までひきつれた肉壁が裂かれるよう。
でもサガ先生だと思うと嬉しくてたまらない。
もういいからめちゃくちゃに衝いてほしい。


サガ先生は僕の力が抜けてゆくのを確認すると、
掌で転がすかのように入り口を支点にして中をゆっくりと攪拌した。
ゆるく大きな波が僕の中を荒れ狂う。
ようやく鈍磨していた内壁が刺すような気持ちよさに襲われる。

「んっ…んっ」
腰が、足先までガクガクしている。
もう限界なのにやめてと言うこともできない。
サガ先生はガラスをギリギリまで手前に引き戻しては奥に押し返している。
また精液を撒き散らしはじめた僕自身には触れてもくれない。
僕がこんなにはしたないから…そう考えると顔までが熱くなる。
大きなローラーに体ごと押しつぶされているみたいだ。
僕は頭から飲み込まれてこなごなになる。

サガ先生…僕は…も…う……

遠のきかけた意識が引き戻される。

「んんーーっ」
ガラスが抜かれた。

体が裏返るような強い苦痛に全ての感覚がふっと途切れる。







真っ白、なのに、ふわりと体が浮びあがるような感じだ。





ああ…僕…



気持ちよすぎて死んじゃったのかな



喪服を着ていてちょうどよかったとか

だからといってこんな格好あまりにもはずかしいとか

こんなところでこんなことして絶対にバチあたって地獄に落ちる…とか

変なことばかり、あとからあとから思い浮かぶ




…シオンは、アリエスの誇りを失うくらいなら即刻死ねと口癖のように言っていた。

誇りどころかもう、僕はもう人間の尊厳すら捨ててしまったのだから

こうなるのも時間の問題だったのかもしれない。




僕はほかでもないサガ先生の…手で…


僕は…幸せ…













   *   *   *   





気が付いたら、あたりは真っ暗闇だった。

…生きてた。
がっかりするようなホッとするような妙な気持だ。
体の異物感はだいぶ減っている。
でも手足が相変わらず動かない。

「んんっ」
サガ先生、と呼ぼうとした僕は、
口が依然ふさがれていることに気が付いた。
先生のハンカチじゃない。
革のベルトのついた…金具だ。


「気が付いたみたいだね」

ドアが開いて人影が現れた。

…アフロディーテ。

なぜここに…。


明かりがついた。
僕は見慣れない部屋の広いベッドの上にいた。
両手は背中に回されて、靴はかろうじて履いてるけど足にも枷が、
なのに下半身は剥き出しのままだった。

「サガ先生に頼まれたんだよ。君の世話をしてくれって」
「ん…っんん!」


…信じられなかった。

どうして?


首の金輪はフックで寝台に固定され、僕は頭を上に起こすこともできない。

「復讐、大成功じゃない」

アフロディーテはくすくすと笑った。

「あんなに怒ったサガ先生、見たことないよ」

ああ、…やっぱり、と僕は思った。
サガ先生は、どこかの神様みたいに、一度裏切った僕をけっして許してはくれないだろう。
分かっていても改めて言われるとショックだった。


「それなのにサガ先生のペットになったんだって?笑っちゃう」

待って…どうしてアフロディーテがそのことを知ってるんだろう。

アフロディーテはそんな僕を見下ろしながら言った。


「サガ先生、君のこともう抱いてくれないかもね」

その言葉は僕の心に突き刺さった。

「だって君はペットでしょう?ペットにそんなことしないよね…」

ペットって…そういうことなの先生…。


「世話はわたしがしてあげるから、心配しなくていいよ」

愕然としている僕の目のまえで、アフロディーテがポケットから何かを出した。


「ほら。これももらったんだ」

嬉しそうに見せてくれたそれは、サガ先生の指輪だった。

それはアフロディーテの指先を離れて、キィンと乾いた音をたてて床に転がった。



アフロディーテはそのときの僕の顔を見て、満足そうに笑んだ。










続き






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