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アフロディーテは手際よく僕をうつぶせにすると、背後に回った。
腰が引き上げられて膝立ちの屈辱的な格好をさせられる…
でももう抵抗する気力もなかった。

「可愛い服…袖口のレースも襟立ても綺麗。でももう着れそうにないのが残念だね」

僕は泣きそうになるのを必死で堪えた。

アフロディーテは僕を後ろからしばらくじっと見ている。
サガ先生といい、どうしてそんなところをそんなに見る必要があるのか理解できない。

「君のここ、凄く綺麗なまま…サガ先生にほんとうに大事にされてたみたい」

冷たく細い指先が、そこをからかうように何度も往来する。

「惜しいな。でもそのぶん楽しみだよ。君が壊れていくの…」

アフロディーテはまた声をたてて笑った。



「サガ先生も甘いよ。わたしに任せるなんて。いじめすぎたら君、死んじゃうかもしれないのに」

いきなり、ぬるりとした冷たいものが、そこに押し付けられた。
僕は反射的に身を硬くする。
でもそこはアフロディーテに押されるままそれをつるりと飲みこんでしまう。
身に覚えのある感触…あの「卵」だった。


「君の好物なんだってね。一つじゃ足りないだろうから…ダースで持ってきたよ。
君はあんなの入れられたんだから全部いけるよね?」

アフロディーテはあのガラス…見たんだ。
今更なのに顔が赤くなる。

「君が悪いんだよ。さもいじめてくれって顔するから…サガ先生だって被害者だ」

なんて言い草だ。いいがかりもはなはだしい。

アフロディーテは数を数えながら卵型の振動体を埋め込んでゆく。
たっぷりと潤滑油を塗られた機器は次から次へと入ってしまう。
とりあえずは8個が限度だった。

「ん…う」
きつい。すごくきつい。
でも苦しくて目の奥がビリビリするのに腰がじわりと緩み出してして僕は焦った。


「ま、こんなものか…」
「んんっ…んーっ」
みっしりと詰められた球体がいっせいに振動を始める。
それらは互いにコツコツとぶつかり合い響きあって不規則な波が中を蹂躙する。

中は熱が渦巻いているのに僕の心はサガ先生が僕のこと、
今度こそほんとうに見捨ててしまったんだという気持でもう悲しくぐったりしていた。
そしてそんな絶望のなかにいるのに体は勝手に昇りつめてく…

…悔しくて涙が溢れてくる。

「いい顔するね…そんなに悔しい?それともそんなに気持いい?まったく恥知らずだな」
アフロディーテはスイッチを強めてゆく。

「ん……んんっ」
いいかげん精は尽き果てたと思っていたのに、
今度は体の奥のほうがまた何度も何度も浅ましく痙攣する。
そんな僕を見てアフロディーテは目を輝かした。

「君…一線超えちゃったんだ…もう女の子…というか…ペットだから、メスか」
アフロディーテは嬉しそうだ。

「ペットって動物だよね。必要なら鞭打ったって去勢したっていいんだ」

僕は朦朧とする頭で確信した。アフロディーテが憎いのはサガ先生でなく…僕だ…。


なにもかもが、…悪い夢を見ているみたい…


つまり僕はほんとうに…地獄に落ちたんだ。




「君なんか狂っちゃえばいい」などと言いながら、
アフロディーテはしばらく卵を出したり入れたりして僕を弄んでいた。
でも急に「…疲れた」というと、ふいっと部屋から出ていってしまった。







   *   *   *   



部屋は電気が消されて、また完全な暗闇だ。
まだ中に残ってる数個の卵が僅かに震えている。
そんなのでも僕は反射的に腰がびくついてしまう。

「ううっ…」

惨めさがつのり、僕は必死で嗚咽をこらえた。
…こんなとき口枷を外すなんて。


そのとき部屋の外で数人の足音が聞こえたと思うと扉が開いた。
僕は身を硬くする。

その集団は「…本当に居る」などと口々に言いながら僕の体をまさぐってくる。

「や…やめろ!」

必死で身をよじったが抑えこまれる。

「うっ…や…やだっ…やめ…」

体中に他人の手が這いまわる。
不快でたまらない。

「あっあああ…!」
そのうち卵のコントローラーに気づいた誰かがスイッチを入れたらしく、
僕は情けない声をあげてしまった。

「随分準備がいいな」

状況を知ってさらに興奮した男たちが僕を犯し始め、
僕はあっさりと貫かれた。


「うっぐ…」

口枷を外したのはこのためか。
臀部はもちろん縛られた腕や手首にも欲望が擦りつけられる。
驚いたことに服の隙間や髪の毛にまで押し付けてくる。
人数すら定かではない男たちの暴走に僕は混乱した。

嫌悪感で吐きそうなのに何のタガが外れてしまったのか、
動きつづける卵のせいか、僕の体はまたずるずると落ちてゆく。


熱がとまらない。
…これはもはやなにかの生理的な防衛反応かもしれない。
でも気持ちはあまりにつらくて、僕は逃避を試みた。


楽しいこと…サガ先生のことを考えよう、サガ先生の手、サガ先生の笑顔…
僕は先生とキスしたことを思い出そうとした。

でも体を触られるたび否応なく現実に引き戻された。
サガ先生とは何もかもが違ってかえってつらくなる
いままでなんでもなかった唇を重ねる行為がいまいちばん耐え難い。

なのに貫かれて激しく揺すられると…僕は…

ああやっぱりもういやだこんな体…


つらい…でもまた…また…ああ


…つらくてたまらない


…サガ先生…笑うって難しい。


僕はもういっそ開き直ってわんわん泣き叫ぶことにした。

アフロディーテに馬鹿にされてもかまうもんか。

でも僕を囲んでた男たちはそこまで人でなしでもなかったらしく、
とりあえずひととおり吐き出して満足したのか、泣き喚く僕の傍から一人去り、二人去り、
しばらくして居なくなった。


暗いところで一人になってホッとして僕はまたやけくそのように泣いた。

「サガ先生…どうして…うう…サガ先生……っ先生…っ」

「うるさいっ」

突然アフロディーテが入ってきた。

「サガ先生、サガ先生ってうるさい! だいっきらいだ君なんか!」

まなじりをつりあげて怒っていても、この人は綺麗だ。

「君は…サガ先生はきらいじゃないの」

「嫌いだ!あんな男さっさと死んでしまえばいい!」

そういうとアフロディーテは怒ったように扉を閉め出て行った。



…わけがわからない。


遠くで「アフロディーテ」と呼ぶ声が聞こえて、足音が二つ追いかけていく。

アフロディーテも僕と同じように、ちっとも余裕なんてなかった…。

でも彼は友だちがいていいなと思った。

同じように走り去ったアイオリアや…他のクラスメイトとは

僕…もう会えないんだろうか

そう考えたらとても寂しくなったけど
でもこんな格好で会っても嫌すぎるか、と思って諦めた。



僕はもしかしたらサガ先生にだけはもういちど会えるかもしれないと思って

暗闇を耐えた。










続き








110415




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