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ようやくウトウトとし始めた頃だろうか。

「おい、風呂」

電気がついて、デスマスクが入ってきた。
部屋と僕の惨状にため息をつく。

「アフロディーテは…?」

「今は…大丈夫だ…ってなんでおまえが心配すんだよ」

なんでだろう、僕にも分からない。でも本人は心配なんてされたくないだろうな。
デスマスクは少し気まずそうに僕を見ると「あいつに余計なこと言うな」と念を押した。

足枷を外され、ふらついた僕はそのままデスマスクの肩にかつがれて
問答無用で風呂に入れられた。

デスマスクは僕の髪の毛から足指、爪の中まで丁寧に、いい香りの石鹸と小さなブラシで
洗ってくれた。卵を出して中まで洗ったのに僕には何もしなかった。
でも「こんな格好で逃げられない」と言ったのに手枷だけは外してもらえなかった。
髪を乾かして体を拭いて、僕はあたらしい白シャツを一枚だけ着せられた。

隣の部屋では食事の用意ができていた。
「喰わねえとサガ先生に会わせてやらねえぜ」と言われて
僕はようやくしぶしぶとデスマスクのスプーンから食べた。
しいたけのリゾット意外にも美味しかった。
その他前菜もグリルした肉もティラミスも…

「『エサ』にしては上等すぎませんか」

「誰が作ったと思ってる、そんな呼ばわり二度とすんな」

デスマスクは凄く恐い顔をした。
ほんと、ガラが悪い。でも今のは僕が悪い。僕は謝って全部たいらげた。
僕はしばらく食事をしてなかったことを思い出した。

「おまえの『エサ』は一日二回だ。今日はあと一回、深夜だ」

「あと一回?」

「活き餌だよ」

「どういう…」

そのときシュラが食卓に来て「清掃終了」とつぶやいた。
嫌な予感がして慌てて寝室に戻るとなんと部屋が全て洗い流されている。
ベッドの下の排水溝に、すべて流れる仕組みだったみたいだ。
すでに温風で乾き始めたタイル張りの床には何ひとつ落ちてない。

「指輪が…っ」

泣きそうになる僕の肩をシュラは背後からトンと叩くと
無言でポケットから指輪を出してくれた。
でも「こいつは俺が預かっとく」と、あっという間に横からデスマスクにさらわれた。

そのあとシュラに押さえられた僕はデスマスクに歯磨きさせられた。
食事とはまた違う嫌な感じで…歯磨きを嫌がる猫の気持がよくわかった。
そしてシャツの下に紐のような下着だけをつけさせられて、
僕はまた例の部屋に入れられた。

「かわいそうだが…俺たちもサガ先生に従ってるんでね」

そう言いながら二人がかりで僕をベッドに固定する。
…ということはアフロディーテもそうなのだろうか。謎だ。

「サガ先生…ぼくがいい子にしてたら迎えにきてくれるかな?」

「…おまえ…」

馬鹿にされる覚悟で言ってみたけど、デスマスクは何ともいえないような顔をして
僕を見ただけだった。


二人が出ていったあと、僕は久しぶりに幸せな気持になった。
サガ先生の名前が聞けて、こんなに嬉しいとは。
このベッドにサガ先生が乗ってきてくれればどんなにいいだろうと思った。

サガ先生はきっと好きだろう、こういう、少し透けそうなリネンの白いシャツ。
制服のシャツの上から…僕はよくいたずらされたっけ…。

サガ先生は僕に下着をつけさせてくれなかった。
ベストを脱ぐと薄いシャツは僅かに透けて、先生はそこにいろいろするのが好きで…。
思い出すだけで腰のあたりが鈍く痺れる…呆れた…今日はもう嫌というくらい
した、というかされたというか…そんななのに…







「生き返った、って顔してるね」

アフロディーテが入ってきた。大輪のバラ模様のシフォンのブラウスが
こんなに似合う人もいないだろう。 

「知ってる?拷問には休憩が肝心なの」

アフロディーテは僕の顔を見ながらポケットから折りたたみナイフを出した。
柄には見事なバラの象牙細工が施してある。

「っあああっ」

アフロディーテはその柄を僕の右胸にギリリと押し付けた。
シャツ越しなのにその花弁の細工が食い込み鋭い痛みが走る。

「い…っ…痛…」

角度を変えて何度も跡をつけるように押し付けたと思うと
今度は柄のへりで立ち上がったそこを削るように擦りはじめた。

「あ…あっ…あ」

潰されてしまうのではないかと思うくらいそれは容赦なくて
それなのに左右にそれがなぶられるたびにビリビリと気持いいのか
痛いのか分からないくらいの電気が走るみたいで…
僕はだらしない声をあげてめちゃくちゃに暴れた。
シャツで隠れてるけれど、多分僕の…

「フ…こっちも欲しいって顔してるけど」
「違…う…こんな」

アフロディーテは折りたたみナイフの刃を起こすと、刃先を僕の胸に向けた。
僕は思わず息を飲む。
滅多刺しにされても不思議でないくらいの、冷たい目に僕は震えた。

「動くんじゃないよ」

ツ…プツ…プツツ…とシャツの胸のボタンの糸を切る。
四つほどで外したところでシャツの前あわせが大きくはだけられた。

「綺麗なピンク…」

そうつぶやくとアフロディーテはすでに硬くなってる左の乳首に直にその柄を押しあてた。

「ああああっ」

まるで焼きごてをあてられたみたいな激痛…なのに頭の芯がつんと痺れるような快楽が尾をひいている。
アフロディーテは僕をマゾヒストと罵りながら何度も左右繰りかえし責めた。
痛みが強くて僕自身が反応しないだけましだった。

しばらくしてアフロディーテは急に僕から離れた。
飽きたのかと安心したのもつかの間、僕の両胸には例の卵がサージカルテープで貼り付けられた。
アフロディーテは椅子に座り、僕の顔を眺めながらスイッチを入れる。

「あ…や…あああ…ああああああっ」
過敏になりすぎた乳首に鈍い機械の振動がたまらず僕はとうとう達してしまった。

「あはははは」

彼は本当に楽しそうだ。
しばらく僕で遊んでから、アフロディーテは僕の口に枷をし、目隠しをした。
アフロディーテはまだがくがくと体を震わす僕の、シャツの裾をまくリあげる。

「それにしても卑猥だな。デスマスクの趣味って最悪」

黒い紐のような下着は、僕自身の根本に絡んで、腰骨にもきつく食い込んでいる。

「まったく品がないよ。今の君にはお似合いだけど」

ああ。どれだけみっともない姿なのか、僕は想像もしたくない。

「そろそろ欲しくてしかたないんじゃないの?君のここ…ひくひくしてるよ…」

「う…く…うう」

悔しくて涙が出る。

「でもあげないよ。スイッチは入れたままにしていってあげるけど」

彼はまた声をたてて笑った。

「良かったね。わたしが遊んであげなくても、君を可愛がりたいって人はいっぱいいるみたいだから」

不穏な言葉を残してアフロディーテは去った。
僕にはそれについて考える余裕もなかった。
胸から、きつくなる股間から、背中の結び目から、
絶え間なく振動が伝わってきて、正気を保つのが精一杯だ。

目隠しをしていても部屋が晧々と明るいのがよくわかる。
そして僕自身の状態も…。
こんなところ人に見られるなんて…


僕はその状態でかなりの間放置された。
実際数分だったのかもしれないけど、とんでもなく長く感じた。

もしかしたらあれはアフロディーテの嘘で、ひょっとしたら誰も来ないんじゃないかとか考えた。
もう来るなら来るで早くして欲しい…誰かこれを外してほしい。発狂しそう。

たぶん…入れられたら、それだけでたぶん僕…

ああ…誰でもいいから早く来て…

それで…誰でもいいから僕に…









外から数人の足音が聞こえる。隣でカチャカチャとベルトを外す音も。

「ほんとにいいのかよ」
「しっ声出すな」
「おまえが出すな」

声が幼い。…しかもどこかで聞いた覚えがある。
僕はアフロディーテの言葉を思い出した。
僕を一方的に…いやまさか僕もよく知ってる人たちなの?
まさか学校の?

部屋に入るなりその集団は僕を見て「うわあっエロ…」などと口々にはやし仕立てる。
俺が先、いや俺が…とバタバタするこのまとまりのなさ、まちがいない…
口笛とかほんとやめて…僕は耳栓もしてくれればいいのにとアフロディーテを恨んだ。

「噂どおりだな」
「サガ先生だけずるいよなー」
「だって一人だけあんな格好で学校にきてるって明らかにさ…」


もう僕学校にいけないと思った。

「しーっ静かに。ムウにバレるぞ」

…もうバレてるよ。
最初の子は邪魔といいながらバリバリとテープを外し乱暴に入ってきた。
気持いいとかヤバイとか色々言いながらあっさりと果ててゆく。
無理矢理昇らされるのも嫌だけどこんなどうでもいいのはもっと嫌だ、と
僕ははっきり思った。


こんなしうちを、サガ先生は僕にして、僕は喜べばいいの?
先生は僕をどんな子にしたいの?
乱暴に抱かれるうちに僕はなんだか分からなくなっていた。

その6人はローテーションで次々と入ってきていたけど三周目くらいで
余裕がでてきたのか無駄口が始まる。

「ねえ俺こいつの顔見ながらしたい…」
「馬鹿俺たちも見られるぞ」
「だってあんな美人勿体無いぜどんな顔してるか…ちょっとだけ」

目隠しが押し上げられた。眩しい。
…幸いうちのクラスの子じゃなかった。でも見たことある顔だ。

「あ…ムウ…俺…となりのクラスの…ずっとおまえのことが…その…」
「おい馬鹿!」

ほんと馬鹿すぎる。でももしかしたら…

「ん…んっんー」

僕にくぎづけになってるその子に僕は目で訴えてみた。
明らかに動揺してる。

「え?何?何て?…これ外せばいいの?」

首のフックをはずれたと同時に僕はその子に頭突きし起き上がった。
足枷がはずれてたから同時に左右の子を蹴りたおし、ドアに向かった。
しかし僕を抱きとめたのはデスマスクだった。

「ったく油断も隙もねえ」

逃げられるかもしれないと思ったけれど甘かった。
生徒たちは強制的に帰らされた。
部屋の外から遠慮ない声が聞こえる。

「すごかったな…さすがサガ先生の…」

僕は反射的に聞き耳をたてた。

「ペットだよな」

…そうだった。
一瞬でも恋人とか愛人とかそんな単語を期待した僕が馬鹿だった。
自業自得以外の何でもないのに、どうしてこんなに胸が痛いんだろう。
僕のなんてシャツと同様もうちりぢりでぼろぼろなのかもしれない。
僕はデスマスクに抱えられたままめそめそ泣いてしまった。

またすぐ風呂に入れられて、別の部屋に放り込まれた。
そこは狭くて、一人用のベッドしかなかった。
鍵はかけられたけど、手枷だけだったから僕は久しぶりに少し眠った。



明け方、一人来て僕を抱いて帰った。
僕は誰だかすぐに分かったけど、気づかないふりをした。









続き







続きます。しばらくお待ちください。
110420




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